第66話 叶わぬ恋は、真夏に溶けて
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への印象だ。
普通なら、めんどくさがって関わるのを嫌がるような子だったのだが、俺は彼女のことが気になって仕方がなかった。
だから、どんな無茶な遊びや探検にも付き合った。兄貴も、「いい機会」だと言うだけで、特に干渉してくることはなかった。
大きな飼い犬に喧嘩を売った彼女のとばっちりで、逆に二人で追い掛けられたり。町のガキ大将を、「女の子」であることを武器に川に突き落とす作戦に付き合わされたり。
やってる最中はとにかく必死だったのだが、そのピンチを乗り切った後の快感は格別だった。いつも俺に甘かった兄貴や、他の男友達との遊びでは、到底味わえないスリルがそこにはあった。
そうして俺達は、ふとしたことで顔を見合わせては、互いに笑い合う日々を送っていた。
今までにない楽しみを提供してくれる。それが嬉しかったから、俺はいつも彼女に付き添っていたのだろう。
――彼女は見掛けない顔だったから、この町の住民ではないことは明白であった。しかし、彼女がどこから来た子なのかが気になることはなかった。
そんなことを気にしていたら、楽しめるものも楽しめなくなる。子供ながらに薄々そう感じていたから、俺は彼女に出身を問うことはなかった。
だから、俺は何も考えなかった。
なぜ、彼女が「しもべ」としている俺との遊びにこだわっていたのか。
なぜ、彼女は河川敷のあんなところにいたのか。
なぜ、彼女と遊んでいると、こんなに楽しいのか。
その理由を考えること自体を放棄して、俺は彼女との日々を好き放題に謳歌していた。それでいいと、信じて疑わなかった。
……だが、彼女の方は違っていた。
ある日を境に少しずつ、表情に陰りが見えはじめていたのだ。
最初は、夕暮れを迎えて別れる際に、少し寂しげな横顔が見えたくらいのことだった。
しかし、そんな顔を見かける時間は次第に増えていき、最後は河川敷に集合した時から既に、曇りきった面持ちになっている程であった。
「こずちゃん、大丈夫?」
「うるたい! りゅーたん関係ないっ! それとっ、いつになったら『こずえさま』って呼ぶの!?」
だが、理由を訪ねても、決して答えることはなかった。
――それでも、俺は彼女を諦めなかった。
彼女が好きだったからだ。いろんな冒険をさせてくれる、俺を楽しませてくれる彼女が。
いつしか、俺は「楽しいから」彼女に付き合っていたのに、気がつけば「彼女が好きだから」付き合うように変わっていたのだ。
きっと、その頃からだろう。自分自身の、そんな気持ちに気がついたのは。
気持ちが暗く、理由を訪ねても答えてくれない。なら、そんなものを吹き飛ばすくらい、明るく振る舞えばいい。
直感的にそう判断した俺は、彼女
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