第66話 叶わぬ恋は、真夏に溶けて
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ちた、びっくりちた!」
呆気に取られていた俺の反応を見て、キャッキャとはしゃぐ彼女。まるで、幼稚園児のようだった。
一応、俺とは同い年であるはずなんだが、当時の久水は実年齢より、かなり子供っぽかったのを覚えている。背丈も、女の子ってことを差し引いても、割と小さい方だった。
「えっと、きみ、だれ?」
「わたくち? わたくちはこずえ! こずえさまってよびなたい!」
「こずえさま? ……おぼえにくいよ。こずちゃんじゃだめ?」
「だめ! こずえさまじゃなきゃだめ!」
自分より小さい女の子だから、という理由で、子供ながらに「優しくしなきゃ」と思っていたんだろう。俺は草むらで待ち伏せしていたことを、特に追及することも怒ることもせず、彼女と友達になろうとしていた。
――ちなみに、この頃の俺は、今のようなボッチではなかった。男子ばかりではあるが、それなりに一緒に遊ぶ友達はたくさんいたのだ。
そういう子達とは、「〜君」と呼んであげるだけで友達になれた。だから、いきなり湧いてきた彼女のことも「〜ちゃん」と呼んでやれば、簡単に友達になれるとでも思ってたんだろう。
だが、「初めての女友達」としてマークしていた久水は、なかなか手強かった。
俺の「こずちゃん」呼びを許さず、なんとか「こずえさま」と呼ばせてやろうと、やたら強情に俺を言いなりにしようとしていたのだ。
「おおぅ!? まさか龍太に初カノか!? 俺を差し置いての初カノか!? いいぞいいぞもっとやれ! 押し倒せっ!」
俺が女子と絡むのが初めてというだけあってか、遠くで見ていた兄貴も妙なテンションで荒ぶっていた。……この日の夜、親父と母さんに嬉々として語っていたのは言うまでもあるまい。
「りゅーたん? あなたはりゅーたんっていうの?」
「りゅうた、だよ。りゅーたんじゃないよ」
「ようし、きょうからあなたはわたくちのちもべよ、りゅーたん!」
「だからちがうってば……」
――その日から、薮から棒に俺をしもべ扱いする、その女の子に連れ回される毎日が始まったわけだ。
特にお互い約束を交わしたわけでもなく、ただ何となくという感覚で、俺達は決まった時間にいつも同じ河川敷に集まっていた。
あの子と遊びたい。この時にここに来れば、あの子に会える。互いに、そう思い合っていたのかも知れない。
ままごと、追いかけっこ、かくれんぼ。二人でも出来る遊びは、とことんやりつくした。そして町に出掛けては、商店街でおじいさん達に「小さなカップル」などと持て囃されたこともある。
……もっとも、その都度彼女は「ちがうもんっ!」と顔を赤らめて俺を蹴飛ばしていたのだが。
――意地っ張りでわがままで、自分の意見を曲げない頑固者。それが、今も昔も変わらない、彼女
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