第65話 ツルッツルの兄、ボインボインの妹
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ジンを降り、「ありがとうございました」とオッサンに一礼する。向こうも軽く会釈してくれた。
そしてトランクから各々の荷物を回収すると、オッサンの操るリムジンは来た道を引き返して行った。また枝と葉っぱに邪魔されてるな……。
「さて、それじゃ行くわよ!」
そんなちょっぴり不憫(?)なオッサンを見送った後、救芽井は声を張り上げて、ズンズンと砂利道を歩きはじめた。俺と矢村も、荷物を抱えて彼女に続いていく。
やがて久水家の前にたどり着いた俺達は、見れば見るほど、田舎の裏山には場違いな屋敷を見上げる。
山の中にこんなリッチな屋敷を建てるあたり、向こうも普通の価値観とは違う思考をお持ちのようだ。決闘しようがしまいが、一筋縄じゃいかない相手だってのは軽く予想がついちまうな……。
今後の展開には、明るい未来は予想できそうにない。敵意モロ出しの表情で屋敷を見上げ二人に挟まれたまま、俺はひときわ大きなため息を――
「樋稟ぃぃんッ!」
――つくってところで、ド派手な音と共に奴(?)が現れた。
「……!? だだ、誰やッ!?」
「はぁ……とうとう出たわね」
激しく玄関のドアを開き、勢いよくこちらに飛び出してきた男。黒いタキシードに身を包んだ、二十歳前後の容貌の青年だ。身長は――百八十くらいはある。
歳は十九歳と聞いてたし……恐らくこの人が「久水茂」という当主さんで間違いないんだろう。
……だが、容姿についての前情報くらいは欲しかった。
だって――彼、ツルッツルなんだもの。スキンヘッドなんだもの。
眩しい太陽光という自然の恵みを受けて、神の輝きを放ってるんだもの……。
「心配したぞ樋稟っ! 昼の十二時を過ぎても一向に来ないのだから! てっきり熊にでも襲われたのかと……!」
「――茂さん、ごめんなさいね。思ったより時間が掛かっちゃったみたいで」
「そんなことは一向に構わん! ワガハイは君が無事であれば、それだけで十分だ!」
しかも「ワガハイ」って……。妹の方も「ワタクシ」とか言っちゃってるし、ホント口調と容姿がそぐわない兄妹だな。
両方とも顔立ちやスタイルは美形なのに、ところどころがあまりにも残念だし。
救芽井は見飽きたように呆れた顔だし、矢村に至っては笑いを堪えるのが必死でプルプルと震えている。
……まぁ、スキンヘッドがタイプという女性もいるだろうけど、ちょっと人を選ぶと思うんだなー、俺も……。
「さてと……それじゃ早速で悪いんだけど、お昼の用意をしてもらえないかしら? 私達、まだ何も食べてなくって」
「ああもちろんだとも! 是非上がってくれたまえ!」
……おや。決闘を申し込むなんて言って来るぐらいだから、どんなおっかない奴なのかと思えば
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