第64話 出発前からストレスマッハ
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、なにをあんなに持っていく気なんやろか?」
「さぁなぁ……。あいつのことだから、なんかややこしい機械でも持ち込むつもりなんじゃないか?」
着鎧甲冑を整備したり、それを使った行動をモニタリングしたりするパソコンや、人体の傷や疲労を、膨大な電力と引き換えに取り払う医療カプセル。
そんなビックリドッキリメカの数々を抱えてるような救芽井家の娘が、普通の荷物で来るわけがない。ましてや、今回は救芽井エレクトロニクスの命運を握りかねない、重大なイベントなんだから。
「一煉寺様、矢村様。リムジンの準備が整いました」
救芽井の部屋から出るなり、グラサンのオッサンが暑苦しく出迎えてくれる。
「……もうこれくらいじゃ驚かなくなっちまったな」
「アタシら、絶対マヒしとるで……」
俺達は肥やしてしまった(?)目を互いに交わすと、一斉にため息をつく。リムジンってアレだろ? 席が長〜い高級車のことだろ? なんで山に行くためだけにそんなモン使うんだよ……。
どうやら、救芽井エレクトロニクスに「現地の交通機関を使う」という発想はないらしい。なにをするにも、自前のものじゃないと信用できないんだろうか。
「お二方、車の方はこちらに――」
「あ、あぁいやいや、救芽井がまだ来てないからさ、ここで待つよ」
「――かしこまりました」
オッサンはまるで機械のように引き下がると、俺達が来る前の位置に戻っていった。……こんな居心地の悪い護衛達が、四六時中ピッタリくっついてんのか? 救芽井も大変だなぁ。
――そして、そんな救芽井エレクトロニクスの体制に、今後も付き合って行かなくちゃならないわけだ。少なくとも、婚約者って立ち位置にされてる俺は。
「……やれやれ。金持ちってのも、楽じゃないんだな」
「失礼ね! 私がいつも楽ばっかりしてるっていうのっ!?」
先行きが果てしなく不明という事実。それに頭を抱えようとしたその時、準備を終えたらしい救芽井が、肩掛けバッグを持って出てきた。
さっきの俺の独り言を悪い意味に取ったのか、不機嫌そうに頬を膨らませている。
「い、いやいや、そういう意味で言ったんじゃねぇよ。ただ、お前ん家の事情について、全然知らなかったんだなーってさ」
「むぅっ……ホント?」
「ホントにホントだよ。――それで? 準備の方は出来たのか?」
あんまり彼女とこの話題を引っ張り続けてると、横にいる矢村が露骨にイラついた顔をするので、俺は早急に話題をすり替えた。
向こうはそれで特に怒ったような反応は見せず、ちょっと恥ずかしそうに「うん、まぁ……」とだけ返してきた。なんかマズいこと聞いたかな?
「なんか怪しいなぁ……変なもん持っていく気やないの?」
「そ、そ、そんなの入ってないもんっ!」
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