第63話 朝っぱらから肝試し
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や! あん時の人らやんっ!?」
俺達二人は顔を見合わせ、目を丸くする。このマンション内にいる全員が、あの時、部室を改装していた連中の作業着を着ていたのだ!
「な、なんであんた達がこんなところに……! もしかして、救芽井の護衛かなんか?」
「いえ、ここは現在、私達使用人の詰め所として使われておりまして」
――素直に驚いてる暇さえ与えず、オッサンはさらにとんでもない爆弾発言を射出してくる。
……詰め所ォ!?
「ちょ、待て待て待て! 詰め所――って、まさか全員がここに住んでるの!?」
「無論です。樋稟お嬢様も最上階にお住まいですよ」
「ひ、ひえぇえぇ!」
なな、何を考えてんだ救芽井はッ! マンション丸ごと買い占めて使用人の居住地にしやがったのか!? なんつーおっかないマンションなんだよここは!
「ま、前の住民は!? 元々ここに住んでた人達はどうしたんだよ!?」
「その方々については、樋稟お嬢様が直々に説得に出向いておられました。『より多くの人々を救うべく、救芽井エレクトロニクスの理念に、是非力を貸してほしい』、と」
へ、へぇ〜……。なんかかなり宗教臭い話を持ち込んでたみたいだけど、一応ちゃんと了解は得てたんだな。
「加えて、住民の方々によりご理解して頂くために、札束を用いた洗礼をなされておりました」
――と思ったらほとんど金の力かいィッ!?
「ここにお住まいだった方々には、こちらの方で新たに高級住宅街を提供させて頂いております。皆様、とても喜んでおられましたよ」
な、なんつーマネを……!
住民一人一人に札束でビンタしまくってる救芽井の姿が、頭に浮かんで離れねぇ!
つーかやってることがもう成金そのものじゃねーか! きっとここにいた人達、引っ越す時には目が「¥」になってたんだろうな……。
ダ、ダメだ……! まるで理解が追い付かない! 俺達みたいな庶民には、到底馴染めそうにない事態が巻き起こってやがる……!
「りゅ、龍太? なんかアタシもう、頭痛くなってきとるんやけど……」
「……奇遇だな。俺もだよ」
俺達にはあまりにも場違い過ぎる金持ちの世界。その圧倒的スケールの世界観に辟易していると――
「従業員各位に告ぐッ! お客様二名、樋稟お嬢様のもとへご案内しろォッ!」
目の前でこちらの様子を伺っていたオッサンが、いきなり鬼軍曹みたいな声を張り上げた。別に怒られてるわけでもないのに、俺も矢村も思わずビクリと肩を震わせてしまう。
「はッ!」
すると、周りで清掃作業に取り組んでいた大勢の従業員(?)が、一斉に動きはじめた。まるで軍隊である。
「お客様ッ! エレベータはこちらにッ!」
「荷物をお預かりしますッ!」
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