第62話 矢村さん家にお邪魔します【挿絵あり】
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いる。
見た感じ、歳は四十代半ば。頭は真っ黒なパーマで、ピンクのパジャマの上に黄色いエプロンを着ている。
まさしく、「肝っ玉母ちゃん」って印象の人だ。さっきの叫び声も……まぁ、納得できなくもない。
「か、かか、母さん……!?」
すると、武章さんに異変が起きる。俺を掴む両手がブルブルと震え、顔色は明らかに青ざめていた。
奥歯がガタガタと音を鳴らし、トラウマの如く染み付いた恐怖心を引きずり出されたような表情になっている。
彼に「母さん」と呼ばれたおばちゃんは、掴まれてたままの俺を見て、目を見開くと同時に――
「お父さん……まさかとは思うけど……その子に、乱暴なこととか、しとらんやろぅなァァァッ!?」
――武章さん以上の威圧を全身から噴き出し、彼を圧倒してしまった。
「ヒ、ヒヒィィ〜ッ!」
とうとう恐怖に敗れたのか、武章さんは俺から手を離すと同時に、腰が砕けたかのように尻餅をついてしまう。周りの大工さん達も同様だった。
「お、おお奥さん! こ、これには訳が……ヒィィ!?」
一人の大工さんが、なんとか弁明しようと口を開く……が、その前に自分に向けられた眼光に、全てを封じられてしまった。
彼は両足をバイブレーションさせながら、情けない格好で後退していく。この光景を一目見れば、おばちゃんがこの大工達からいかに恐れられているかは明白だろう。
「げほっ、ごほっ……!」
なんとか武章さんからの拷問(?)から解放された俺も、両膝をついて詰まった息を吐き出しているところだ。この場に、両の足で立っていられる男は、一人もいないということだろう。
「ちょっと坊や、大丈夫かい!?」
するとおばちゃんは、急に心配そうな顔色に表情をチェンジさせて、俺に駆け寄ってきた。……正直さっきの怒号の後だと、恐ろしくて敵わないわけなんだが、今となっては逃げる余裕すらない。
そして、あっという間に目の前まで来た彼女は、俺の腕を抱き寄せて――助け起こしてくれた。
……ぶっちゃけると、死ぬほど安心したわ。母親の包容力って、すごいね……。
「ごめん! ホンマにごめんなぁ! ウチのバカ共のせいで、迷惑掛けて……!」
「……あー、いえいえ。全然平気ですから」
心底申し訳なさそうに頭を下げるおばちゃんに対し、俺は優しく嘘をついた。
――これ以上、ややこしい事態にはさせたくないんでね。正直殺されるかと思ったけど、またおばちゃんの威圧を目にするのも嫌だから。
「それより、賀織さんはいらっしゃいますか? 今日、待ち合わせってことになってたんですけど……」
「ああそうやった! 賀織やったら、今は身支度しとるところやから! もうすぐ来るけん、ちょっと待っとってな!」
俺はさ
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