第62話 矢村さん家にお邪魔します【挿絵あり】
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男はこうなるんやと、思い知らせるために来たんやけんなァ!?」
俺の話を聞くつもりは毛頭ないらしく、武章さんは俺の体をガクガクと揺らして、さらなる怒りに眼を燃やしていた。
――いやいや、その娘さんは自分から男の集団に突っ込んでたんですけど!? 男より男らしかった時期もあるくらいなんですけど!
……この親にして、あの娘あり、か。確かに、ここまで逞し過ぎる親父さんって、今の一般家庭じゃなかなかいないもんなぁ。
し、しかしこのままじゃあ合宿どころじゃなくなっちまうぞ……! 相手が矢村のお父さんである以上、迂闊な抵抗はできないし……。
「おいお前らァ! このゴキブリ野郎に、娘をだまくらかした罪ってもんを教えてやれェ!」
その時、武章さんが放ったその一言で――
「へぇい! 親方ァァァ!」
「思い知らせてやりますよォォォッ!」
「賀織ちゃんに近づくたァ、大した度胸だなガキャァァ!」
ぞろぞろと。そう、本当にぞろぞろと。
武章さんによく似た、厳ついお兄さん達が、次々に近隣住宅の塀から飛び出してきた! ゲリラかこの人達!?
「貴様がここに来ると聞いて、弟子達を呼び寄せておいた。覚悟は出来ただろうな……?」
これまでと違い、低く唸るような声で、武章さんは俺を睨みつけて来る。……心の中でも、これだけは言いたい。
――出来るわけねーだろ!?
以前、矢村ん家は大工の家系だと聞いたことはあるが……普通の大工さんは「無実の男子高校生を集団で囲んで脅す」なんて恐ろしいマネはしないだろう。
――ヤクザの事務所と間違えたのか? そんな言い方は矢村に失礼だと、わかってはいるが。
泥棒でも捕まえたかのような、怒りと喜びを内包した笑みを浮かべる、大工さん一同。俺の事情などお構いなしなのは、間違いなさそうだ……。
別に何か悪いことをした覚えはないんだが、矢村ん家相手じゃ抵抗するにも引け目がある。――これは、いわゆる「年貢の納め時」ってヤツなのか?
「さァお前ら! こいつの罪深さを教えてやれェェェッ!」
そんな俺の疑問に答えるかのように、武章さんがけたたましい怒号で指示を出す。どうやら、俺の予測は悪い意味で大当たりしそうだ……!
胸倉を掴まれて身動きが取れない俺に、大工さん達はジリジリと歩み寄って来る。別に何かしたわけでもないが、「もはやこれまでか」と、俺は強くまぶたを閉じた。
――次の瞬間。
「うるッさいんよあんた達ィィッ! ご近所様に迷惑やろうがァァァッ!」
現時点で一番うるさい叫び声が、辺り一帯に響き渡る。その轟音の震源地に、俺を含めた全員の視線が集中した。
そこに立っていたのは……恰幅のいい、おばちゃんだった。玄関の前で、威風堂々と仁王立ちして
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