第2章 久水家にて、一悶着あり
第61話 夏合宿と技術競争
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がその理由だ。たぶん、「救済の超機龍」の噂が広まったせいだろう。
そんな中で学校に集まったりなんかしたら、教師に絡まれて面倒なことになりかねない。
……ということで、今日は救芽井の家に集まってから、改めて裏山の久水家へ向かうことになってるわけだ。
「しかし救芽井のヤツ、駅前のマンションだとは話してたけど、具体的に何号室かまでは言ってないんだよなぁ……」
『けど、来ればわかる、って言いよったなぁ』
「まぁな。あいつのことだし、派手な目印でも立ててるのかもな。で、それがどうしたんだ?」
そこで本題に入ろうとすると、矢村はさらにテンパったような口調になってしまった。
『あ! え、えーと……その……よかったらなんやけど、一回、アタシん家に来てくれん? 一緒に、行きたいんやけど……』
家に来てほしい、と言い出した辺りから、彼女の話し声が次第に尻すぼみになっていくのがわかる。なんというか、自信がないって感じだ。
ホント、男勝りだった頃からは考えられない有様だよなぁ。何がこの娘をこんなに変えちまったんだか。
「なんだ、そういうことか。りょーかいりょーかい、行きますよ」
『ほ、本当? アタシでええん?』
「いや、お前以外に誰と行くんだよ」
今日行くのは俺と救芽井と矢村の三人なんだから、矢村と行くしかないだろうが。
そんな真っ当な返事を出したつもりだったのだが、向こうは何が意外だったのか「はうっ!?」と可愛らしい悲鳴を上げていた。
何を考えてるのかは知らんが……まぁいいか。可愛いから許す。
「じゃあ、お前ん家に寄ってから救芽井ん家に行くってことでいいんだな。じゃあまた」
『――うんっ! 待っとるけんな!』
……朝っぱらから元気なことだ。彼女はハツラツとした声を聞かせたと思ったら、鼻歌混じりに通話を切ってしまった。
――やれやれ。どいつもこいつも活動的過ぎて、こっちがいくら気張ってても霞んじまいそうだよ。
嬉しいやら、悲しいやら。そんな気持ちが胸につっかえたせいなのか、今日の朝メシはどうも味を感じなかった。
それから、およそ二時間半。時刻は朝九時。
俺は黒いカーゴパンツに赤いTシャツというラフな格好で、数日分の着替え等を詰めたリュックをしょい込む。
……なにせ、久水家との決闘が済んだら、ぶっ続けで四郷研究所との技術競争にも行かなくちゃならないのだ。これはちょっとした、「夏合宿」なのである。
「日時も場所も近しいし、まぁ立て続けのスケジュールになるのも、しょうがないんだろうけどさ……。もうちょい夏休みってモンを満喫させろってんだよなァ」
軽くそんなことをぶーたれながら、俺は家を出る。朝日の眩しい日差しが視界に突き刺さり、思わず目を覆う。
「さァて、
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