第2章 久水家にて、一悶着あり
第61話 夏合宿と技術競争
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いんだ。久水茂って人のことはよく知らないから、結果的にそうなのかまではわからないけど……。
とにかく、今の時点でそう判断されてる以上、俺はなんとしてもその人に勝たなくちゃならない。
そのためにも、まずは腹ごしらえだ。
俺は冷蔵庫に向かい、タマゴ二個と玉ねぎ一個、そしてサラダ油を取り出す。……朝メシを自分で作らないといけない、ってのはなかなか辛いもんだな。
それなのに一学期中、ずっと俺のために昼メシの弁当を作って来てくれてる矢村には、マジで頭が下がる思いだ。
出来れば日頃の感謝を込めて、手料理でもプレゼントしたい――ところなんだが、あいにく俺は料理が得意じゃないんだなぁ。
やたら「塩辛い」いりたまごと、「焦げ気味」の玉ねぎ炒めを寄越されて、喜ぶ女はまずいまい。少なくとも、唐揚げやロースカツまで作れる矢村に渡せるモンじゃない……。
自分の不器用さに苦笑いを浮かべつつ、俺はタマゴを割ってボールに入れ、塩胡椒を混ぜ込んでいく。それに並行して、フライパンにサラダ油をひき、あらかじめ刻んでおいた玉ねぎをぶち込んだ。
中火で玉ねぎをじっくりと炒め、タマゴをとき、色が変わるのを待つ。出来上がったら、さっさと皿に玉ねぎ炒めを移し、再び油を使ってタマゴを焼く。
そんな(料理としては恐らく相当に)単純な作業を経て、ようやく俺の朝メシは日の目を見ることができる。今日は特に早起きだったから、わりかし落ち着いて作ることができた。
普段は遅刻ギリギリまで引っ張るから、適当になりがちなんだよなぁ……。今日は大事な日なんだし、早起きできて良かったかもな。
「といっても、大して美味くもないんだけどね。トホホ……」
――と、下手くそな男料理の味に涙した瞬間。
テーブルに置いていたケータイが、盛大に着うたを垂れ流して着信を訴えていた。ボインかつお尻の小さい変身ヒロインの定番テーマだ。
「もしもし?」
通話ボタンを押し、着うたのメロディをぶった切る。しかし、そこから出てきた声は……。
『あ! りゅ、龍太!?』
「お、矢村か。どうしたんだ? こんな朝早くから」
……どうやら矢村からだったらしい。着うたのおかげで、「ボイン」なヒロインを妄想して気力を持ち直していたところだったのだが、なぜか矢村が出た途端に「ペッタンコ」が脳内を支配してしまっていた。恐るべき胸囲(脅威)だ……。
『あ、あんなぁ、龍太。今日、救芽井ん家に集まる予定やったろ?』
「ん? あぁ、そうだな。確か、駅前のマンションだったろ」
矢村はやや上ずったような声で、今日の予定を確認してきた。
――そう、今日は救芽井の家で集合することになっている。
近頃、学校側が俺達の無断活動に気付きはじめているから、というの
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