第2章 久水家にて、一悶着あり
第61話 夏合宿と技術競争
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になっていた。商店街のおばちゃん達が、俺の話をしているのを小耳に挟んだ時のこそばゆさといったら……。
また、この町に、かの「救芽井エレクトロニクス」のお嬢様がいるということもあってか、ネット上では「同社の新製品」と噂されているらしい。売り物じゃなくてごめんね……。
◇
――とまぁ、そんな「充実している」と言うべきか「死ぬほどキツイ」と言うべきか悩ましい日々を送っていた俺も、ついに決闘当日を迎えてしまったわけで。
緊張でもしてたのか、朝の五時に目を覚ましていたのだ。
「……あー、ダメだ。目が冴えてあんまり寝れなかった感じ……」
気だるげにベッドから身を起こし、時計を見てため息をつく。
集合予定は十時半。一時間前に家を出ても十分間に合うくらいなのに、こんな無駄に早起きしてどうするんだと。
……とは言え、目が醒めてしまった今となっては、二度寝する気にもならない。俺は嫌々ながらベッドから立ち上がると、思い切り背伸びした。
その後、部屋を出て、近くにある階段を踏み外さないように手すりに掴まる。そして、二階の自室から一階の居間へと向かった。
――ちょっと前まで、家族四人で過ごした空間がそこにはあった。
テーブルを全員で囲い、一緒にご飯を食べて、一緒に笑い合って。そんな当たり前の暮らしが、小学校の頃までは続いていたんだ。
厳つい親父と、おっとりしていておっちょこちょいな母さん。そして、俺にベタベタに甘かった兄貴。
世間一般の価値観に基づくならば、きっと「うっとうしい」くらい、「幸せな家庭」ってヤツだったんだろう。
俺が中学に上がる頃には、親父と母さんは転勤で家を離れ、去年までは兄貴との二人暮らしが続いていたんだ。
そして今年に入ってから、兄貴も就職して家を離れた。
「……へへ。一人暮らしってのも、いいもんだよな。四六時中フリーダムなんだから、さ」
――だから今、この家で暮らしてるのは、俺一人だ。
聞けば、救芽井もアメリカにいる家族から離れて、一人でこの町に住み着いているらしい。俺に会うためだけに。
……見上げた根性だよな。俺なんぞに会いたいがために、「自分から」家族と離れることを選ぶなんて。
それを認めちゃう救芽井家も大概な気はするが……。
――だが、それだけ俺がアテにされちまってるのも事実。まるっきり応えられなかったら、それはそれで男としてマズい節はあるだろう。
だからせめて、この決闘騒ぎだけはなんとかしてやりたい、とは思う。
……そのための訓練で殺されかけはしたけど、ね。
「さて! いつまでもウジウジしてらんねぇ、メシだメシ! 腹が減ってはなんとやらだ!」
――そう、俺が気張らんことには、その救芽井が不幸になりかねな
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