第60話 必要悪 〜アステマ〜
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、必死に自らの存在を訴えていた。……道路にしては、妙に線の幅が狭いぞ。
まさか、これは……!
「商店街近くの踏切だわ! ここから近い……急いで、龍太君ッ!」
「……あいよっ!」
――どうやら、踏切に人が取り残されてる状況らしい。こいつはマズイ、一刻を争う!
俺は窓の外へ身を乗り出すと同時に、真紅の「腕輪型着鎧装置」を口元に近づける。
「――着鎧甲冑ッ!」
そして迅速に音声を入力し、赤い帯に全身を巻かれながら、屋外へと飛び出した。
目の前が真っ赤に染まり、やがて機械的なカメラの視界が完成していく。そのメカニカルな世界を包んでいる、角付きマスクが頭にしっかり嵌まっているのを確認しながら、俺は学校の敷地から全力疾走で脱出した。
『反応の点滅が速くなってる……。アドレナリンの数値がより高まっているみたいよ!』
「つまりヤバいってことか!?」
『かなり、ね。パニックを起こして、正常な判断が出来なくなっていても不思議じゃないわ』
救芽井は俺に通信で状況を伝えつつ、シビアなことを言ってくれる。ちょっとは気が楽になる話も欲しいんだけどな……。
「――ちっくしょう! ただでさえ三十キロ走で両足ガタガタだってのに! 今度からは最悪でもちゃんと十キロ以内に留めてくれよな!」
『これがうまくいったら、考えてあげる!』
「……上等ォッ!」
俺は思うように動かない両脚にチョップを入れ、がむしゃらに町内を駆け抜ける。走りやすい道をとにかく進み、道がないなら屋根から屋根へと飛び移る。
今までの常識全てをひっくり返すくらいのつもりで、俺は「素早く現場に到着する」ことだけを目指した。
……付き合いの長い人達が多い、この町の商店街。その少し手前に見える踏切にたどり着いたところで、確かに異常が窺えた。
四十代くらいのおばちゃんが、踏切のど真ん中で立ち往生してやがる!
しかも、俺が来た頃にはとっくに警報が鳴っていた。いつ電車が来てもおかしくないぞ!
「あっ――ぶ、ねぇえぇえぇッ!」
俺は視界の隅に巨大な影が見えた瞬間、けたたましい叫びを上げて、踏切の中へと一心不乱に飛び込んでいた。
ゴオオオッ! ……という何かが迫る音に総毛立ちながら、俺は焦げ茶色に錆びたレールの上に立つ。
眼前には、俺以上に脚を震わせている、買い物かごを抱えたおばちゃん。どうやら、恐怖のあまり動けなくなってると見て、間違いなさそうだ。
「……う、お、おおおおおおッ!」
――俺は敢えて電車の方を見ずに、おばちゃんを迅速に担ぎ上げ、奥の踏切バーをハードル走のように飛び越える。
次の瞬間、殺戮マシンになりかけた車両が、俺の背後を凄まじい勢いで通り抜けていくのがわかった。あの轟音が、俺の
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