第59話 双生の大魔神
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がッ! 俺の、俺の腕にィィッ!?
「……あら? なにかしら、これ」
――彼女のフェロモンと腕に当たる柔らかさに対し、理性を賭けて闘っていた俺。
そこに全神経を集中させていたせいか、その時、足元に「あるモノ」が落ちていたことに全く気づけずにいた。
ソレを、救芽井が拾ってしまうまでは。
彼女の手にあるのは、蒼い一枚の花びら。
これは……間違いない。昨日の四郷が着ていたワンピースに付いていた、花飾りから取れたものだろう。
「あぁ、それね。昨日、四郷に偶然会ってさ。その時に偶然付いたんだと思う」
別に隠すようなことでもないし、俺は正直に教えてやった。
――ただ、それだけだったのだが。
「……なんですって?」
「いや、だから四郷に会ったんだってば。飛ばされてたアイツの帽子を取ってやった時に、それに付いてた花飾りから取れたヤツが、たまたまくっ付いてたんじゃねーかな」
そこまで丁寧に説明したところで、何が悪かったのか、訝しげにこっちを睨んで来る救芽井。ちょ、俺がなにをしたってんだ!?
「……ふーん。アタシらと別れて帰る途中で、こないだ会ったばっかの女の子に、そんなことしよったんやなぁ……。きっと、すんごぉく仲良くなったんやろなぁ〜……?」
待て。待て待て待て。なんで反対にいる矢村まで、尋問官みたいな面構えになってんの!? 俺、ちょっと助けてあげたってだけだよね!? 悪いこと何もしてないよねッ!?
二人とも、どす黒い目で俺を見上げながら、怪しく口元を吊り上げる。いや、だからなんでこんな空気に――
「……どうしてかしら? 今日はちょっと、いつもよりビシバシ鍛えてあげたい気分ねぇ」
「……奇遇やなぁ〜。アタシも今日は、いつもの三倍くらいはみっちり勉強させた方がいい気がするんや。もう特訓三日目やし、龍太もそろそろ慣れてきたやろうしなぁ〜……?」
――ま、待て。待てよお二人さん。
俺は全然そんな気分じゃないですよ? 三日目だからって慣れてなんかないですよ? むしろ、伊葉さんの説明が長引いたせいでエロゲーすら出来ず、心身ともに参っちゃってるんですけど?
つーか、慣れる方がおかしいから。この状況も、何かが果てしなくおかしいからァ!?
「じゃあ今日は……」
「いつもの――三倍で行くで?」
二人はやがて満面の笑みを浮かべ、俺を挟むように両腕を抱きしめる。「表」情で言うなら、まさしく天使のような清々しさを放っている……と言えるのかも知れない。
――ただし、「目」は笑っていない。
まるで、真実だけを残酷に映し出す鏡のように。
……ここ、重要ッ……!
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