第58話 河川敷の出会い
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――俺が小学生の時に振られた、初恋の女の子。
どこか面識があるようなそぶりだったらしく、本人がいない間に問い詰めてきた救芽井と矢村に対し、俺は端的にそう説明してやった。
……薄々予想はついていたが、やはり凄いリアクションを見せてくれたよ。
頭を掻きむしって絶叫したり、わけのわからないことを喚きながら、椅子を窓の外に投げたり。用務員さんに当たると危ないから、ほどほどにしてもらいたいものなんだけどな……。
「龍太君ッ! 彼女のことは忘れるのよ! 一刻も早くッ!」
「そうやでぇっ! 向こうもそんなこと覚えてないやろうし、龍太の恋は『これから』始まるんやけんなっ!」
などと凄まじい剣幕で迫る姿は、さながら風神と雷神のようであった。屏風よりおっかない顔してたぞあいつら……。
そんなことがあったせいか、翌日からの特訓というのが、これまた悍ましいものになっていたわけだ。
午前は十キロメートル走を始めとした体力トレーニングに、午後は部室で着鎧甲冑の知識を一から叩き込む集中講座。居眠りなどしようものなら、どこから持ってきたのかスタンガンを容赦なくぶっ放してくる。
まるで中三の頃に経験した、受験と特訓の平行プログラムのような、俺の都合完全度外視の殺人メニューだったのだ。
好きでもない相手と結婚させられそうな状況ゆえか、時折切なげな顔色を浮かべていた救芽井を見れば、まぁ多少は仕方ないとは思うよ? だからってね……スタンガンはねーだろ。
矢村がしきりにマッサージしてくれたり、本来は関係ないはずの着鎧甲冑講座にまで付き合ってくれたりしなかったら、恐らく初日で心が折られていたに違いない。
――今はその二日目の日程が終わり、我が家への帰路についているところである。
救芽井や矢村とは住む場所がやや離れているので、一人でいられる貴重な時間なのだ。
「ヒィ、ヒィヒィ……ま、全くもぅ……。拳立て二百回とか、ギャグの次元じゃねーかよぉ……」
河川敷の土手道をズルズルと歩く俺の姿は、きっと干からびたゾンビのように見えることだろう。他の部活動生に、出来れば代わってもらいたいもんなんだけどなぁ……。
救芽井曰く、「救済の超機龍」は俺の生体反応にしか呼応しない仕組みになっているのだとか。要するに、救芽井とかに代わりをやってもらうことは出来ない、ということだ。
「……ま、役得っちゃ、役得なのかもな」
――着鎧甲冑を纏い、アメリカで活躍するスーパーヒーロー。そんな彼女のことは遠い存在のように思う一方で、実はひそかに憧れていた。
子供の頃に憧れたヒーローのような活躍を重ねる彼女は、多くの羨望や称賛を集めている。俺も、その中に一人なのだろう。
そうでなければ、こんな不条理の極みなどに付き合
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