第58話 河川敷の出会い
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っかり転んだりしたら、帽子まで水浸しになるな……気をつけないと。
「よ、よーし、取れた! 取れたぞ四郷!」
そうして約数分、水流との格闘を繰り広げた後、なんとか帽子を手にすることができた。
俺は手にとった戦利品(?)を振り回し、目的のブツを手に入れたことをアピールする。
当の四郷は、相変わらず無表情ではあったが、口が小さく開くくらいの反応は示していた。
喜んでくれている――可能性が、微粒子レベルでも存在してくれてると助かるんだがな……。
後は、そこから彼女の元へ持ち帰るだけだ。
しかし……これがまた、なかなかしんどかったりする。一応、救芽井に死ぬほどしごかれた後だからな……。
一歩、また一歩……と、焦らず慎重に進んでいく。四郷も、さすがにちょっと心配そうな顔で俺を見ていた。
――いや、心配なのは帽子であって、俺じゃないのはわかってるよ? わかってますとも……。
そんなブルーな気持ちをひた隠し、俺はついに彼女の傍までたどり着いた。
「ほぅら! お待ちどーさま!」
「……あっ……」
四郷は少し驚いたような顔で俺を見ると、嬉しそうな顔色――になる直前で、どこか悲しそうな顔をしながら帽子を受け取る。
――おいおい、なんでそんな表情なの!? 「宝物」だったんだろ、ソレ!
「どうしたんだ? 良かったじゃないか、『宝物』が無事返って――おわぁっ!?」
だが、その辺を問い詰めようと足を進ませた瞬間、水の下にある小石に足を滑らせてしまった。
ツルン、とアホみたいに半回転して、後頭部から水の中にバシャリとダイブ! ぼふぁ!
「ガボゴボゴボ……ぷはぁっ!?」
こ、こんなカッコ悪い展開あるかー!
……と、なんとかびしょ濡れになりながらも身を起こした俺だが――
「ふぅっ、ふぅっ……あ、あれ? 四郷?」
――次の瞬間には、マヌケな顔で辺りを見渡していた。
四郷が、いつの間にか姿を消していたのだから。
あちこちに視線を移しても、彼女の姿は見当たらなかった。
俺が水に沈んでいる間に、帰っちまったのか……?
「それにしちゃあ、速過ぎるよなぁ……俺がドボンしてたのって、ほんの数秒だろ……?」
そんな短時間で、周囲を見渡しても全然見当たらないところまで走っていったのか? 酷い嫌われようだな、俺……。
「トホホ……ま、『宝物』は返したんだし、別にいいか」
おおよそ、今日は一人で散歩にでも繰り出してたんだろうな。「お姉ちゃん」から貰った大事な帽子が返ってきたんだし、今頃は喜んで家に帰ってることだろう。
めでたしめでたし、だ。
……俺は「帰れ」って言われた挙げ句、水浸しになってもお礼一つ言われなかったけどね。グズッ…
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