第58話 河川敷の出会い
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、俺のガラス製ハートは痛恨の一撃に苛まれていた。
こんな無表情な女の子に「帰れ」などと言われたら、大抵の思春期には深刻なダメージが残されるものなのだよ。少なくとも、俺には。
救芽井からの「変態君」呼ばわりのおかげで、少しはそういうのにも耐性がついたのかと思ってたけど、別にそんなことはなかったぜ……。
おそらく、久水に振られた経験がフラッシュバックしたせいでもあるのだろう。あれ……なんだか四郷の姿がぼやけて来たぞ……クスン。
これ以上醜態を晒す前に、この場から脱出するしか俺の心を守る術はあるまい。俺は四郷に背を向けると、とぼとぼと退散――
「……んっ?」
――しようかな、というところで足が止まってしまった。
彼女が佇んでいる、川の中心。そこから飛び出ている岩の上にある、白い帽子が見えたからだ。
彼女が着てるワンピースと、全く同じ色使い。加えて、帽子のつばの付け根とワンピースの胸元には、蒼い花飾りがある。
おそらく、あの帽子とワンピースとでセットなのだろう。彼女は……あれをずっと見ていた?
「帽子、あそこまで飛ばされちまったのか?」
「……帰るんじゃなかったの?」
「ふぐぁ! ――か、帰る前に質問に答えてくれ!」
「……飛ばされた。お姉ちゃんがくれた、ボクの宝物……」
やっぱりな。つ、冷たく指摘されることを覚悟の上で聞いて正解だったぜ……。
川の傍に立ってはいるが、「宝物」を取りに行けずにいるところを見るに――水が嫌なのかな?
気になって表情を窺ってみると、案の定、険しそうに眉を潜めているのがわかった。「宝物」を取り返せないことに、歯痒い思いを感じてるってところか。
川自体は緩やかな流れだし、浅いし……別に溺れるようなことはないと思うんだけどなぁ。
――濡れるのがそんなに嫌か?
「……あー、なるほどね。それで『帰れ』ってことか」
水が苦手なばっかりに、自分の大切な「宝物」を取りに行けない。そんなカッコ悪いとこ、見られたくないもんなぁ。
ましてや、俺とは知り合って間もないんだから。
――そこまでわかっちゃったら、することは一つだよな。
俺は靴と靴下をその場で脱ぎ捨てて、ズボンの裾を膝の上まで捲り上げる。四郷はそんな俺を見て、何をしだすのかと目を見開いた。
「……なに、してるの?」
「用が終わったら帰るから、ちょっとそこで待ってろよ」
これ以上冷たい目で見られたくないので、敢えて彼女からは視線を逸らす。そして、ボチャリと川に両足を沈めて、俺は前進を始めた。
流れそのものは緩やか……とは言え、やはり水に足を取られると、かなり歩きにくい。時折ふらつきながら、俺は岩の上に引っ掛かっている帽子を目指す。
――これでう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ