第58話 河川敷の出会い
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うものか。ま、こっぱずかしいから本人の前じゃ断じて口には出さないけどね。
……だからといって、こんなフザけた喧嘩なんて御免こうむりたいんだけどな。ていうか、その前に特訓で死にそうだ……。
――せめて早く家に帰って、二次元エロという名のオアシスに浸りたい。明日もまた、想像を絶する煉獄が待っているというのなら。
「今日は久々に『ムラムラ☆パラダイス』全ルート網羅でも――ん?」
そんな本日のエロゲーカリキュラムを勝手に打ち立てている最中、俺の目にとある人影が留まった。
中学生なみに小さな体格に、川の水と見紛うような艶やかな髪。そして、その長髪を一束に纏められた、あのシルエットは……。
「……四郷?」
気がつけば、俺はその名前を呼んでいた。
河川敷に伸びている、水の流れを前に佇む、この眼鏡を掛けた少女の名前を。
「……あ……」
一拍遅れて、向こうも反応を示して振り返ってきた。「普通とは違う何か」を思わせる赤い瞳は、どこか不安げな様子を伺わせている。一昨日とは違う、純白のワンピースを着ている今の姿とは、対照的な印象だ。
だが、相変わらず表情らしい表情はない。後ろから俺に声を掛けられても、あんまり動じている感じでもなかった。
一昨日会った時は着鎧した状態で喋ってたから、誰だかわからないかも……という心配もあったのだが、俺の声を聞いて納得したように頷く仕草を見る限り、俺のことには気づいたらしいな。
それにしても、ちょっと暗い性格の娘なのかな……って最初は思ってたが、彼女から出ている冷たいオーラは、それどころのものじゃない、という雰囲気を放ってる感じだ。
何というか、言葉を交わしたりする程度のコミュニケーションさえ、忌避しているような気がするくらいだし。
だが、そんなことで怖じけづいてはいられない。生体反応に引っ掛からなかった、って話も気になるし、ちょっとその辺、聞いてみようかな……?
「よ、よう。あのさ――」
「……帰って」
――まだ何も言ってぬぇえーッ!
取り付く島もなしですか! いやもう、話す資格すらなしですかッ!? 俺達ほとんど「知り合い」の段階ですらないはずだよねッ!?
なんで用件言う前に「帰れ」なの!? そんなに俺がキモいの!? そうかキモいんだな!? じゃあキモいって言えよ! キモいって笑えよ! ちくしょおおーッ!
「……何で頭抱えて泣いてるの?」
「――思春期にはね! いろいろとあるんだよっ!」
「……いろいろとあるのは別にいいけど、ボクとしては早く帰ってほしいな」
「いいよもう! わかったよ! 産まれてきた俺が悪かったよ! お望み通りトンズラするよチキショー!」
久々に女の子から冷徹な言葉を浴びせられたせいか
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