第57話 決闘禁止の法律が逃げた【挿絵あり】
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「け、決闘ぉ!?」
「ですってぇぇ!?」
新装されたばかりの部室に、矢村と救芽井の素っ頓狂な声が響き渡る。
そんな彼女の前に置かれた、真っ白な椅子に踏ん反り返る久水梢。そして、その隣にチョコンと座っている、四郷鮎子という眼鏡少女。
「その通りざます!」
「……梢、相変わらず強引……」
俺は女性陣が椅子に腰掛けてテーブルを挟んでいる中、着鎧した状態のまま救芽井の傍に立たされていた。対外的な意味での見栄えをよくするためらしいのだが、これじゃまるで執事みたいじゃまいか……。
――あのあと、救芽井に合わせろと迫る久水と、彼女に付き従っている(?)四郷の二人を抱えて、ここまで大急ぎで戻ってきたわけなのだが。
久水は着いた途端に俺を蹴り倒し、礼も言わずにズカズカと部室に乗り込んでいったのだ。四郷は無表情ながらも、ペコリと頭は下げてくれたんだけどな……。
まぁ、どうせ俺だし、今はそのことは置いておいても構わないだろう。そんなことより百倍重要なことが、目の前で繰り広げられようとしているんだから。
「まとめると、つまりこういうこと?」
眉をヒクヒクと震わせながら、救芽井は不機嫌そうな顔で事情のおさらいを始めた。
「以前私が振った資産家・久水家の当主である久水茂と、こちらで決められている婚約者とで、私を賭けて着鎧甲冑で決闘しろ、と」
「そういうことになるざます。ワタクシ達が負けた時は、無条件でスポンサーになって差し上げることになっておりますわ。ただし! お兄様が勝った時は、あなたは久水家の妻として迎え入れられることになりますのよ。フォフォフォ!」
彼女の兄であり、久水家の当主であるという、久水茂。
彼は以前ニュースになった、「婚約者の存在を理由に、救芽井への求婚を断られた資産家」の人なんだそうだ。
そのあと、個人資産を注ぎ込んで「救済の龍勇者」の「G型」を購入し、護身用として運用しているのだとか。
見るからにイライラしてる救芽井をさらに煽るかのように、久水は高らかに笑う。今に始まった疑問じゃないんだが、あのおかしな笑い方はなんなんだマジで……。
「……本当は『おーほっほっほ』って笑いたいらしいんだけど、滑舌が悪いからあんな笑い声になってるんだって……。コンプレックスみたいだから、言わないであげて……?」
そんな俺の胸中を察してか、四郷がボソリと補足してくれた。そういや、資産家の娘とつるんでるなんて、この娘は一体……?
「なぁ、君は久水とどういう関係なんだ?」
「……ボク、梢の友達……。少なくとも、ボクはそのつもり……」
小声でちょっとした質問を投げ掛けてみたら――まさかのボクっ娘発覚。ま、かわいいからいいか。
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