第57話 決闘禁止の法律が逃げた【挿絵あり】
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……にしても、妙に暗いよな、この娘。生体反応にも引っ掛からないなんて、どう考えても普通じゃなさそうなんだが。
――本来なら、救芽井としても彼女の実態について問い詰めたいところなんだろうけど、さすがに今はそれどころじゃない。もしかしたら、救芽井エレクトロニクスの日本支社にスポンサーがつくのと引き換えに、救芽井が久水の家に連れ込まれることになりかねない事態なんだから。
「もちろん、拒否権はあなたにあるざます。スポンサー探しに喘いで無駄な時間を費やすのも、我が家に嫁いで新たな道を切り開くのも、あなた次第ですわ」
「……なんで龍太が負けることが前提なんやっ!」
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余裕の笑みを浮かべて脚を組んでいる久水に、矢村が般若のような形相で食ってかかる。椅子から立ち上がり、声を張り上げるその姿に、俺は思わず圧倒されそうになった。
「あら、龍太と言いますの? 救芽井家の婚約者というのは」
「グッ! ……み、認めたかないけど、今はそういうことにされとる……みたいやな」
「そういうことにされてるって何よ! まるで私達が無理矢理に龍太君をお婿さんにしてるみたいじゃない!」
「いや、正にその通りだろ!? 俺の人権ガン無視ですかー!?」
自分のやってることに何の疑念も持っていない彼女に、俺は思わず突っ込んでしまう。
いろんな意味で目が離せないよな、この娘。ほっといたら知らない間に印鑑押されてそうだし。……俺を婿にするって話がマジであれば、だが。
「では、そこの赤い殿方が? 随分と品のなさそうな男ざます。……龍太……龍太?」
その時、久水は何かに感づいたように眉を潜めた。考え込むような表情で、なまめかしい唇に人差し指をそっと当てている。
……まさか、覚えてるんだろうか? 俺のこと。うわぁ、ヤベェぞコレは……。
「とにかく、そんなに自信満々なら受けて立つわ! 日時は一週間後だったわね!?」
「――そうざます。場所は町外れの裏山にある、私達の別荘ですわ!」
清々しいほど挑発に乗ってしまった救芽井は、あっさりと決闘の話を承諾してしまった。久水は何かを思い出そうとしていたところに声を掛けられたためか、一瞬不機嫌そうな表情を浮かべたが、すぐに高飛車な態度を取り直してみせた。
どうやら、当事者たる俺が全く入り込むことができないまま、決闘の話が固まってしまったらしい。基本的人権の尊重はどこに行ったんだ……。
「ふんっ! 龍太はな、恐くて悪いロボット軍団だってやっつけたんやで! ボンボンのオッサンになんて負けるわけないやろっ!」
「お兄様はまだ十九歳ざますよ!? 確かに老け顔には違いないざますが……」
「つーか、その『ロボット軍団』を片付けたのはお前だったろーが」
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