第53話 部室はちゃんと許可を取って使いましょう
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働いて全員検挙。……というちょっとした事件が、去年の今頃に起きていたわけだ。
ちなみに俺は最初、「危ないから」と矢村の殴り込みを止めようとしていたはずだった。
……はずだったんだが。
「芸術研究部」の連中が、彼女の着替えまで盗撮しようとしていたことを聞いた途端、気がつけば矢村以上に俺が暴れていたらしい。
なんで止めるつもりだった俺までが、そんなことになっちまったのかは今でもわからない。
ついでに言うと、なんでそのことを彼女に喜ばれたのかもわからなかった。普通、訳もなしに暴走する男とか気味悪がるもんだと思うんだが。
まぁ、そんなこんなで芸術研究部は解散することになり、寂れた部室だけが残されたわけだ。
だけど、目の前にある元芸術研究部の部室は、入り口の周りがかなり綺麗にされている。ほっとかれた部室って、得てして埃まみれになるはずなんだけどな。
「ここが、いずれ私達『着鎧甲冑部』の部室になる場所よ。さぁ、入って」
そんな俺の疑問をよそに、救芽井は率先してドアノブに手を掛けた。
――そして開かれる、真っ白な世界。
「……はあっ!?」
「えぇえっ!?」
異世界にでも紛れ込んでしまったのだろうか。俺と矢村は、大口を開けて素っ頓狂な声を上げる。
壁の色や本棚、テーブルに至るまで、全て純白に塗装された別世界が、この部屋一帯に広がっていたのだ。
設備こそ普通だが、清潔感がまるで違う。埃など一寸も見つからないし、まるで学校の施設じゃないみたいだ。
約七畳半の小さな部室には違いないが、明らかに他の部活で使われる部屋とは別次元の領域である。
「随分と放置されていた部室だったらしいし、劣化が酷いだろうと思ってね。我が社の配下に命じて、掃除だけは先に済まして貰ったの」
「……まさか、校長室を出てから電話してたのって、それか!?」
「ええ。狭い部屋だし、私達がここに着く前に片付くと思って」
お、恐ろしい……! 金の力、マジパネェっす……!
部屋の奥にある窓から校舎の外を見てみると、「救芽井」というイニシャルが付いた作業着を着た数十人の男達が、一斉にこちらをガン見していた。
救芽井は、その威圧感にガタガタしている俺の隣に立つと、にこやかに手を振って見せる。
「ご苦労様! 部室、なかなか悪くないわね!」
「樋稟お嬢様ッ! 我等一同、あなた様のお役に立てたことを、生涯の誇りに思いますッ!」
彼女のお礼に対して、遠くにいる男達の先頭に立っていた中年男性が声を張り上げた。三十代後半くらいのガチムチマッチョマンである。
そのリーダーらしき男性に続いて、数十人の男達全員が「光栄でありますッ!」と怒号のようなお礼を口にした。結構な距離があるはずなのに、ビリビ
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