第53話 部室はちゃんと許可を取って使いましょう
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……だけど、こんなヒーローみたいなマネする生徒がウチにいたのか?
――ん? ヒーロー……?
「ちょっと龍太君! いつまでポケッとしてるのよ! 早く来なさい!」
頭の中につっかえた何かがある。そんな気がしたのだが、深く考える暇もなく救芽井に怒られてしまった。
気がつけば、彼女と矢村の二人は既に廊下を歩き出していたのだ。俺は一旦考えるのをやめ、彼女らの後を追う。
◇
しばらく救芽井の後ろを歩く俺と矢村だったが、両方とも彼女が何処に行くつもりなのかは把握していない。
「なぁ、龍太。救芽井ってどこに行きよんやろか?」
「俺が知るかよ……。そういやお前、なんかすごいニュースがあるとか、さっき歩きながら言ってなかったか?」
「あ! そうそう大ニュースあるんやで! なんでも一昨日から、十年前の総理大臣だった伊葉和雅さんが来日しとるんやってさ! なんか救芽井の話を聞いたけん、一目見たくて来たんやって!」
「伊葉和雅、か。……にしても救芽井目当てって、えらくミーハーな総理大臣がいたもんだな。つーか、なんで十年前の元総理大臣なんだ? ――いやそれより、なんで俺達、部室棟まで来てるんだよ……?」
最初に集まっていたウチのクラスの教室に戻るのかと思えば、ツカツカと素通りしてしまったのだ。
今、俺達が歩いているのは、もといた校舎から少し離れた、いわゆる部室棟と呼ばれる場所なのである。
どこへ行こうと言うのかね。……と、その旨を問い質してみると、彼女は背を向けたまま淡々と答えた。
「さっき校長先生から、部室の空きが一つあるって聞いてね。さっそくお邪魔させて頂くことにしたわ」
「おいおい、まだ認められてもないのに、勝手に使っちゃマズいだろ? 見つかったらどうすんの」
「見つかる前に条件を揃えておけば済む話よ。……ここね」
恐ろしい程ごり押しを続ける救芽井は、使われていない空き部屋にしては、妙に綺麗に掃除されたドアの前に立つ。
なんか変な匂いがするけど……なんだ? ……ワックス?
いや、ワックス掛けなら終業式前に終わったはずだし……。
そこに掛けられていた名札を見た俺と矢村は、思わずジト目になってしまった。
「『芸術研究部』……か。去年、矢村が殴り込んで壊滅させた部活だよな」
「『写真とか絵とか書いたり、研究したりする部活』って触れ込みやったけど、裏じゃ女子の着替え盗撮したり、それをネタに脅したりしよるような連中ばっかやったからな。思わず、ブッ潰してもうたんやったなぁ……」
矢村が言う通り、ここにいた部員は芸術をカサに着て、性犯罪レベルのオイタを繰り返していたらしい。
それをクラスメートの女子から相談された矢村がブチ切れて、殴り込みを
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