第52話 校長という名の壁
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部活の設立には、顧問の先生と最低五人の部員が必要。
校長室まで来た俺達三人は、そう告げられてしまった。
「そんなっ……! 着鎧甲冑についての研究や、今後の展望についての議論をする部なんですよ!? それがどうして!」
「い、いやいや、それは十分わかっておるんだがね。部を作るのなら、せめて条件くらいは満たしてもらわないと。いくら君が救芽井エレクトロニクスのご令嬢だからと言っても、規則を無視されてはこの学校の示しがつかないだろう?」
部屋の両脇にズラッと並ぶ本棚に囲まれた、一つの大きな机。
そこを挟む二人の口論は、未だ平行線を辿っているようだった。
白髪と黒髪が半々で、ちょっとシワだらけの顔が特徴の、五十代後半くらいの初老の男性。
……という出で立ちの校長先生は、救芽井の半ば無理矢理な交渉に困惑している様子だった。
確かに、正式に部と認めてもらうには、数合わせで俺と矢村を入れても人数が足りない。
部と認められなきゃ、学校から部費は降りないわけだが……。大企業の令嬢ならそんなの別にいらなさそうだし、特にこだわりがないなら、同好会で十分な気もするんだけど。
「な、なぁ救芽井。条件が揃わなくても、同好会として活動は出来るんだしさ。あんまり校長を困らせるのはどうかと――」
「なに言ってるの! いざ私達の活躍が知れ渡った時に、『同好会』なんて格好のつかないアピールをするつもり!?」
着鎧甲冑についての議論や研究はどこ行った……。どうやらさっきの救芽井の話は、それとなく校長を納得させるための建前だったらしい。
実際は、着鎧甲冑を実際に運用して、人助けでもするつもりだったんだろう。宣伝が目的なんだから、まぁ当たり前と言えば当たり前か。
「活躍を知らしめるって……。君達まだ学生なんだから、あんまり無茶をするような部活を作るのはお勧めできんな」
「とっ、とにかく! これはただの部活じゃないんです! 世界最先端テクノロジーを応用した人命救助システムを、より身近に浸透させるプロジェクトなんですよ!?」
条件を出されても、ボロを突かれても、彼女は全く引き下がる気配がない。そんな無駄に高尚な話を持ち出されても、庶民のオッサンには呪文にしか聞こえないだろうに……。
校長はやたらごり押ししてくる彼女を前に、めちゃくちゃ冷や汗をかいている。超有名な大企業の令嬢が言うことなんだから、無下にはできないという葛藤があるんだろう。
「なんか救芽井がこっちに来てから、いろいろと騒がしくなった気がするんやけど」
「気のせいじゃないだろ、それ。現に転入してきた頃なんて、日本中の報道陣が詰め掛けて来て石油危機みたいなことになってたし」
机をバンバン叩いて荒ぶってる救芽井の後ろで、俺と矢村はヒソヒソと小さく言
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