第52話 校長という名の壁
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た。
なんか俺が持ってる文集を指差して、めちゃくちゃ焦った顔をしている。救芽井も、彼の慌てぶりにたじろいでいた。
「あ、えーと……すいません。戻しときますね。元の場所どこでしたっけ?」
「下から三番目の棚だ! いいから早く片付けなさい!」
元々この文集が置かれていたという、本棚の一部分に向けられた人差し指は、まるで悍ましい化け物を指しているかのように震えている。
そんなにこの頃の卒業生ってヤバかったのか? きっと相当な不良ばかりだったんだな……。
あんまり昔のヤな思い出を掘り起こすのも悪いし、俺は校長先生の言う通りに、ササッと本棚に文集を戻した。
「ゴ、ゴホン。それでは例の件に話を戻すが、条件だけは満たしてもらわなければ我が校に影響を与えかねない。すまないが、日を改めてもらえないかね」
「……?」
俺が元通りに本を戻すと、途端に校長は調子を取り戻していた。さっきの慌てぶりが嘘のように。
不審に思わずにはいられなかったが、それを問える空気でもなかった。
完全に詰め寄るタイミングを外してしまった救芽井は、バツが悪そうに視線を外すと、「わかりました……失礼します」と言い残して校長室を後にする。
俺と矢村も、校長の変貌を訝しみつつ、そそくさとこの場を立ち去った。
「瀧上凱樹……四郷鮎美……!」
――彼がその名前を呟いていたことには、気づかないまま。
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