第52話 校長という名の壁
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葉を交わす。
救芽井エレクトロニクスの令嬢にして、世界的なアイドル。そんな彼女がこんな片田舎まで来た衝撃は、計り知れなかった。
初めて顔を出した終業式の日から約一週間、全国のレポーターがヘリまで動かして、彼女を一目見ようとスクランブルする始末だったのだ。連日やってくる取材責めをひらりとかわす彼女のスルースキルは、特筆に値するだろう。
小さな町に大勢の報道陣が詰め寄ったせいで、住民に多大な迷惑が掛かったことがあったためか、今ではソレも鎮静化している。
救芽井いわく、彼女の父にして「救芽井エレクトロニクス」と「着鎧甲冑」の創始者である、救芽井甲侍郎さんが報道局に圧力を掛けたことも原因の一つらしい。
「世間的には、婚約者に会うために来日してきた、ってことになってるが……」
「全部無理矢理決められたことなんやろ? 真に受けることなんかないけんな?」
「いや……でも、キスまでしてきたんだぞ」
「じゃあ、ア、アタシとちゅーしたら婚約解消よな?」
なんでそうなる!? 俺は小さく愛らしい唇をんーっと突き出す矢村から、慌てて顔を遠ざけた。
「ひどい……龍太って、そんなにおっぱいが好きなん?」
「三度の飯より大好きなのは認めざるを得ない! だけど、それとこれとは激しく別問題だからな!?」
あ、焦った。以前は男勝りが女の形を借りてるような奴だったのに、なんで急にこんな女フェロモンを噴出する危険人物になったんだよ!?
危うく……危うく流されて間違いを起こすところだったジャマイカ!
俺と矢村がそんな悶着を起こしている間も、救芽井は校長をやり込めようと迫っていた。とうとう机の上まで乗り上げていやがる……。
「だから! この学校の名声を高める結果にも繋がるのですから、一刻も早く正式に認めて下さい!」
「そ、そこまで言うなら今から募集を掛けてみてはどうかね? 君が一声掛ければ、いくらでも部員も顧問も集まると思うが……」
「ただの高校生や教師に興味はありません! 着鎧甲冑についての理解があり、かつ知識や技術、パイプ等を持った人材が必要なんです!」
……もはや部活じゃねぇ。中小企業もメじゃない注文レベルだ。
挙げ句の果てには、某ラノベの人気キャラみたいな台詞まで言い出したし。このままじゃマジでラチがあかないな……。
「そんな人物はこの学校にはそうそういないだろう? 頼むから考え直して――」
「そうは行きませんッ! 龍太君との婚前の思い出には、『着鎧甲冑部』がどうしても必要なんですッ!」
――うおおおぃィッ! なんかとんでもねー発言が聞こえたんだけど!?
つーか結局は私情バリバリかいッ!?
俺がそうツッコむより先に、救芽井は思い切り机を殴り付けた。そ
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