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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
始まりのジュレット6
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結局、夕食の席にジアーデは現れず、チョウキとミシャンラと一緒に食事を済ませて部屋に戻ったが、とてもではないが量が足りなくて寝付けそうに無かった。
26歳だと言い張っても見かけは十代だと押し切られて酒も飲めずじまいだ。
「まあ、奢ってもらって駄々もこねられはせんが・・・」
独言て窓際のベッドに腰掛ける。
半分開いた窓から外を見ると、月明かりに照らされた白く平らな石畳が青白く反射して星々の瞬きに映えていた。
「綺麗なもんだ。都会のビル群じゃあこんな光景無いよな」
呟いておいてビルってどんなものだっけ、と考えるが、すぐに無駄な行為だと思い直してベッドに横になる。
ウィスキー飲みてー、と呻いていると、ドアを小さくノックする音が2回聞こえてそちらに首を巡らせた。
ややあって、再びノックが2回。
化粧台に乗せられた大きめな置き時計を見ると、針は23時を半分ほど回った所だ。
「良い子は寝る時間だぞ・・・」
のっそりとした動作で入口に向かい、ゆっくりと木製の扉を開くと、少し気まずげな表情を浮かべたジアーデが、600グラムはあろうかと言うステーキと二つのグラス、ちょっとしたサラダの乗ったお盆を右手に、ウィスキーと思しき黒ガラスの酒瓶を左手に立っていた。
着ているのはピンク色の薄手のパジャマだ。
「こんばんにゃ〜。もう寝てたかにゃ?」
彼女越しにロビー兼食堂を見ると、まだまだこれからといった感じで酒盛りをしている客が多い。
バルジェンは頭の後ろに手をやって、彼女の持つ肉に視線を落とす。
「いや、腹半分って感じ?」
「つまり眠れにゃいと言う事だにゃ。ではでは、一緒に飲むにゃ」
にこにこと嬉しそうな顔をして左手の黒い酒瓶を掲げるジアーデを部屋に招き入れると、窓辺の小さなテーブルの背もたれ付きの椅子を引いて進める。
彼女がお盆と酒瓶をテーブルに置いて座ると、バルジェンは化粧台からスツールを引っ張ってきてそれに腰掛けた。
「むむ、バルジェンさんスツールは女子が座る物にゃよ?」
慌てて腰を浮かせようとするのを、バルジェンは不思議そうな顔をして静止した。
「男は背もたれ付きに座らにゃならんの? 別にそんな決まりないでしょうに」
「うーん。でもだにゃあ」
「なんだかこっちの方が楽だし」
「バルジェンがいいならいいんだけどにゃ・・・」
ジアーデは困ったように微笑むと黒い酒瓶のキャップを開けてグラスに琥珀色の酒を半分ほど注いで彼に差し出した。
「ありがとう」
彼女も自分のグラスに酒を注ぐのを待って、互いのグラスを軽く打ち鳴らして乾杯する。
「ところでなんの乾杯?」
「えーと、バルジェンの冒険者デビュー?」
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