幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十話:近づく最期
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以上に、この機械には沢山の思い出が詰まっている。あの世界で出会い、友人になり、そして死に別れ、救えなかった人たちとのかけがえのない繋がりがある。そして何より、これは今は亡き義両親がオレに与えてくれたものだ。手放したくは、ない。
「そうか……縺君、できればなんだが、その思い入れというのを藍子君に話してあげてはくれないか?」
「SAOの話を、ですか?」
「ええ。君は藍子君と木綿季君が幼かったころ、よく物語を読み聞かせしていたそうですね。もう一度兄さんの物語を聞きたいと、藍子君はいつも言っていたんです」
確かに、オレはよく藍子や木綿季に物語の読み聞かせをよくしていた。それはまだオレが引き取られたばかりの頃、うまく家庭に馴染めないオレを見た義両親が提案してくれたことだった。
「……分かりました。藍子がそれを望むのなら」
「ああ、よろしく頼んだよ」
そう言って倉橋さんは部屋から出ていった。
その姿を見送ってから、オレはアミュスフィアを手に取り、頭に装着した。冷ややかな感触が頭を包む。これが、藍子と最後の会話になるかもしれない。
それでも――――
† †
目を開く。
そこはスリーピング・ナイツが宿として使っている一室だった。恐らくオレとユウキがログアウトしたあの後、みんなが宿まで運んでくれたのだろう。
体を起こす。
隣にはユウキのアバター、そして離れた所にはジュンたちが眠っていた。藍子――ランの姿は、この部屋にはない。
「外、か」
窓からは朝焼けの光が差し込んでいるが、まだ一日の始まりには早いだろう。
皆を起こしてしまわぬよう気を付けて、宿屋のドアをゆっくりと開けた。
「――――」
燃えるような朝焼けに、そしてその向こうに立つ後ろ姿に、目を奪われた。
その姿はなんて儚いのだろう。なんて、脆いのだろう。
朝焼けの中に溶け込む彼女の姿に得も言われぬ不安を覚えて、気づけばオレは、華奢な彼女の身体を背後から抱きしめていた。
「もう…苦しいですよ、兄さん」
「……すまない。藍子」
藍子の声は酷く穏やかで、苦しいとは言いつつも、彼女の手はオレの腕を離そうとはしなかった。
「ねえ、兄さん。昔のように、お話しを聞かせてもらえないですか?」
「……ああ、いいさ」
† †
それからオレは、藍子にSAOでのことを全て話した。オレが攻略組として最前線で戦っていたこと、神の盾という仲間がいたこと、そして彼らを失ったこと、オレがそれをやったこと、茅場との最後の戦いも、全て。
「それが兄さんの、掛け替えのない思い出なんですね」
「ああ。良い思い出ばかりではなかったが
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