幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十話:近づく最期
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
た。
病室には、ボクと兄ちゃんだけが残った。
ボクは兄ちゃんに縋り付いて、赤ん坊のように泣き続けた。
† †
「おやすみ、木綿季」
泣きつかれて眠ってしまった義妹を病室のベッドへ寝かせる。これまでずっと一緒だった双子の姉がもうすぐいなくなってしまうのだ。彼女の心の傷は、オレ程度では到底計れるものではない。
「計れていなければ、ならなかったのにな……」
オレは両親亡き後の二人を守るために引き取られた。彼女たちが追ってしまうだろう心の傷を一緒に背負ってあげるために紺野家の一員となった。だが、両親が亡くなった時にオレは彼女たちの傍にいてあげることができなかった。それどころか、守るべき義妹が今際の際にいるというのに、オレはなにもしてあげることができない。
「……いや、まだだ。まだ、できることは残っているはずだ」
鬱屈した思考を振り切る。こんな出来損ないの兄貴でも、彼女たちからある程度慕われていることは感じられる。ならば、藍子のため、木綿季のためにできることは全てやらなければ。
現在の時刻は十時を回ったところ。まだ、倉橋さんはいるはずだ。
病室の扉をゆっくりと開ける。既に消灯時間を過ぎた廊下は暗かった。まるでオレ達家族の行く末を暗示しているかのようだ。それでも、止まってたまるか。
† †
「ちょうどいい時に来てくれたね、縺君」
倉橋さんは、【第一特殊計測機器室】という場所にいた。ナースセンターにいた夜勤のナースに教えてもらって、入室許可証たるパスコードも渡してもらえた。恐らく、病院側がそのように配慮してくれたのだろう。なにせここはメディキュボイドのある場所、つまりは藍子が必死に病と闘い続けている場所なのだから。
「今しがた、藍子君の意識が回復したよ。予断を許さない状況なのは確かだけど、会うかい?」
「それを、藍子が望むのならば」
「ええ、望んでいるとも」
倉橋さんに連れられて、オレは機器室の隣にある部屋に入った。そこは機器室の半分程の狭い部屋で、黒いレザー張りのリクライニングシートが二脚あるのみだった。シートのヘッドレスト部分に、未だ見慣れない円形型のヘッドギアが掛けられているのを除けば。
「そういえば、縺君はまだナーヴギアを使っているんだったね」
「ええ。アミュスフィアを買う金も惜しいですし。それに、あれはあれで、思い入れがあるので」
当初ナーヴギアは政府によって回収されるはずだったが、提出を渋ったオレを見てあの総務省仮想課の菊岡さんが特例として所持を許可してくれた。あの人には借りができてしまったが、それでも、オレはナーヴギアを手放す気にはなれなかった。
勿論、忌々しい道具ではある。だがそれ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ