幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十話:近づく最期
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ツが何か言っていたなぁ」
悪意の牙が、レンに襲い掛かろうとしていた。
† †
「ラン!」
躱しきれなかった矢を肩から引き抜き、背負っていたランを降ろす。彼女の瞳は閉じられており、握った手に力は籠っていない。
「姉ちゃん!!」
駆け寄ってくるスリーピング・ナイツの皆は一様に不安げな表情を浮かべている。
ああ、そういえば、彼らは既に仲間を二人見送っているんだった。不安を覚えるのも、仕方がない。
「……オレの責任だ。ランが不調だということを知っていながら、無理をさせてしまった」
「そんな、レンさんの責任では―――!」
叫ぶタルケンの声を遮るように、ランの手がオレの頬に添えられた。
「――――タルケンの言う、通りですよ…?兄さんの、せいではありま、せん」
その手は震えていて、とても頼りなかった。薄れかかった彼女の姿は、まるで彼女の命の残量を表しているかのようだった。
「皆、ごめんね…?最後まで、昇れなかっ――――」
「ラン!?」
最後まで告げられず、ランの姿は金色の光になって消えていった。恐らく、意識が消失したことによる強制ログアウトだろう。だとするならば。
「レン、ユウキ、今すぐ現実世界に戻ってくれ」
「うん…ジュン、後はお願い」
「すまない、落ち着いたら戻ってくる」
「うん、早く行ってあげて」
最悪の事態だけは免れていてくれ、そう思いながらログアウトのボタンを押す。電子世界から意識が離れていく間、柄にもなくそう祈り続けていた。
† †
「結果だけ言おう。最悪の事態は回避できました」
倉橋さんのその言葉に、安堵のため息が漏れる。隣に座る兄ちゃんの身体からも、力が抜けていったのが分かった。だが、倉橋さんの表情は険しいままだった。
「……けれど事ここに至って、私が改まって話すことはなんであるか、君たちはもう知っていると思う。だから、勿体ぶらずに簡潔に言います」
その言葉で、分かってしまった。姉ちゃんの未来が、もう残りわずかなことが。
「紺野藍子さんの命はもう長くありません。いつ生命活動が停止してもおかしくはない状態です」
あの時と同じだ。パパとママが亡くなったあの時と同じ光景だ。目の前には険しい表情をした倉橋さん。やがてボクの視界は涙で濡れていって―――
「え……?」
大きくて暖かい手が、ボクの頭に触れていた。ああ、そうだった。あの時と同じなんかじゃない。今のボクには、悲しくてどうしようもないときにその悲しみを分かち合ってくれる人が隣にいたんだ。
「……二人で、心の整理をつけるといい」
そう言い残して、倉橋さんは席を立っ
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