幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十話:近づく最期
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二体目のドラゴンの、その顎の中に。
「藍子!!」
この時ばかりは我を忘れてランの下へ飛んだ。群がる守護騎士を大太刀の鞘すら使って薙ぎ倒し、ランを噛み切ろうとしているドラゴンの鼻面へ切っ先を突き立てる。
「ギャァァァァァァ!?」
悲鳴を上げた途端投げ出されたランの身体を抱き留める。
彼女のHPは僅かにだが残っていた。彼女のアバターは自壊してはいない。だから間に合った、そう思った。
「シウネー、早く回復を!」
「もうやっています!」
バカな、と叫びそうになるのを堪える。視界の端で確かに回復していくランのHPバーが見えたからだ。だが、彼女は目を覚まさない。そればかりか、彼女の指先が透けてきているではないか。
「――――まさか!」
ここまで来て、オレはようやくラン、否、藍子が目を覚まさない原因に思い当たった。
限界を迎えたのはランではなく、藍子のほうだ。彼女の消えかかっていた命の火が、今正に、消えていっているのだ。
「うおっ!?」
「ジュン!」
ユウキと共に仁藤のドラゴンを抑え続けていたジュンが、ブレスに巻き込まれ吹き飛んでいく。
「タルケン、下がって!」
「僕はまだやれます!」
スリーピング・ナイツは、瓦解していた。精神的支柱でもあったリーダーの意識が不明。これまでにない程の強敵があと三体。既に全員のHPは危険域を指示している。
どう見ても、もう、これ以上は進めなかった。
「全員、撤退!! バラバラでも良い。世界樹の入口まで引き返せ!」
「そんなこと…っ!!」
「ランがお前達が倒れていくのを望むと思うか!! 全員生きて戻る、これがランの意思だ!!」
この一言が功を奏したのか、全員が悔し気に引き返していく。幸いなことに、追ってくるのは守護騎士だけで、ドラゴンは上空に滞空しているだけだった。
消えかかっているランを背負い、オレも騎士の矢を避けながらなんとか入口目がけて飛ぶ。事ここに至って、ダメージなど気にしている暇はなかった。
† †
世界樹の頂点で、須郷は詰めていた息をゆっくりと吐きだした。
「まさか、今の能力値で世界樹の八割を昇り切るとはね……いやはや、流石のボクでも尊敬の念を隠せないよ。君のお友達は、随分と面倒な存在だ」
須郷の嫌味に、アスナは唇を噛んで耐えることしかできなかった。
助けが来ないことに絶望しているわけではない。ただ、あのレンが敗走したことに、少なからずショックを受けていたのだ。
「成程ねぇ。彼があの終世の英雄『レン』君、か」
少し、牽制しておく必要があるな。そう呟いた須郷の声は、アスナの耳には届かなかった。
「ああ、確か、アイ
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