幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第二十話:近づく最期
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スナは腕を摩った。
「一体何事だい?」
『不味いです、このままでは世界樹が突破されます!』
そのナメクジの声は焦りに満ちていた。しかし須郷は先ほどよりも不快感を顔に滲ませて言った。
「取り合えずモブの数を倍にしてから映像を見せろ」
『は、はい!』
そして画面が切り替わる。刹那、耳を塞ぎたくなるほどの轟音が鳥籠中に響いた。
『くっそ、さっきより多くなってるぞコレ!!』
聞こえてきたのはまだ年若いであろう少年の声。映像に映し出されたのは、長大な剣を振るいながら毒づく赤髪の少年だった。
『だめ…回復が追い付きません!』
『くぅっ!』
墨にも似た色の霧を突き抜けてきたのは陣形を組んだ色とりどりのプレイヤー。だがその数は一パーティ程しかいなかった。須郷自ら極悪難易度と称し、その証拠にこれまで一度もクリアされることのなかったグランドクエストにこの人数で挑むには、本当の生死の懸かったあの世界で生きてきたアスナから見れば、無謀にしか見えなかった。
だが。
『焦るな。矢はオレとユウキが叩き落す。お前たちは目の前の敵を潰せばいい!』
その声が聞こえてきたとき、アスナの中にあった懸念は吹き飛んだ。
「レン君!」
SAOの時よりも髪が大分伸びているが、それでも見間違えるはずはない。あれはかつて英雄と呼ばれていた少年だ。
それなら、と淡い期待を抱いてプレイヤー達を見る。だがその中に、アスナが待ち望んでいる人はいなかった。
「そんなバカなことがあるか!クソ、クソ、クソッ!!」
微かな落胆を覚えるアスナとは裏腹に、須郷はそれどころではなかった。
天空都市へと繋がる世界樹の内部。そのフロアは、上へ登れば登るほど敵のリポップが加速していく本当の意味で攻略不可能なレベルのクエストだった。それはそうだろう、プレイヤー達が夢見た天空都市などそこにはなく、あるのはただ須郷の目論見を完遂させるためだけの実験施設なのだ。絶対に、辿り着かせてはなるものか。
「おい! アレを出せ!!」
須郷の声に返答はなかった。だが代わりに、ディスプレイの向こうに変化が起こる。
最早聞きなれてしまった、ドラゴンの雄たけび。総数五体のドラゴンが、世界樹の頂点から飛来する。
最早、須郷がこのゲームをクリアさせる気がないのは明らかだった。だがアスナはそれを指摘することはなかった。ただ祈る。どうかこの世界から解放されて、愛おしい彼と再会する時を。
『オレがやる。下がっていろ!』
その願いを、英雄に託しながら。
† †
「オレがやる。下がっていろ!」
何か、些細な不信感が燻っている。
かつてキリトにSAOはカーディナルというシ
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