第48話 物語の終わりと、始まり【挿絵あり】
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松霧高校の一学期の終わりは、至って平和なものだった。
教室に入った途端、龍太がクラスメートの男子達に、ロメロスペシャルをお見舞いされる事態があったりはした……ものの、それ以外は何事もなく、終業式自体は滞りなく行われた。あるとすれば、その男子達が式直前に賀織に制裁されたことくらいであろう。
だが、恒例の校長先生による長話に疲れた生徒達が、次々と意識を睡魔に奪われていく。特にこの一学期の終業式においては、校長の夏休みの長い思い出話が加味されるため、その精神的攻撃力はさらに上昇するのだ。
ゆえに「真夏の催眠術師」の異名を取る、その校長のスピーチに耐えられるのは、よほどの集中力や忍耐力を持った、一握りの者に限られてしまう。賀織もその一人であり、それが彼女がこの高校でも高い人気を得ている理由の一部でもある。
そんな中、龍太は数ある脱落者の中でも、断トツの最下位を常にキープしていた。兄の会社から仕入れたエロゲーで、夜更かししているせいでもあるのだが。
賀織はそんな彼を一度は厳しく叱るのだが、結局は恋心から甘やかしてしまう。それもいつもの光景であった。
そして、一学期最大の関門である催眠術師の猛襲をかい潜れば、後はホームルームが終わる時を待つだけ。松霧高校の夏休みは、まさに間近に迫っていたのだ。
そのホームルームまでには一定の休み時間がある。その間、教室の隅で机に突っ伏していた龍太に、聞き慣れた声が響いて来た。
「ほ〜ら龍太、しゃんしゃんせんと、出る元気も出んなるで?」
「……たくもー、俺しか話し相手がいないわけじゃねーんだし。他の友達にも構ってやんないと、かわいそうだぞ?」
かいがいしく話し掛けて来る賀織に対し、龍太はバツが悪そうに顔を逸らした。彼がこうして、友人に恵まれずに隅に追いやられているのは、紛れも無く賀織の露骨な言動が原因なのだが、それを正直に口にして彼女を傷つけるということだけは、避けねばならないと本人は感じていた。
そこで遠回しに自分から離れてもらおうと、他の友人達のことを引き合いに出したのだ。
賀織は龍太とは違い、この学校でも多くの友人がいる。もっとも、(男女関係に)厳しい家庭のことや、周りの男子に因縁を付けられている龍太のことがあるため、そのほとんどは女子なのだが。
「ええけん、気にせんといてや! アタシんとこの友達もみんな、応援してくれとるしっ!」
「はい?」
「あ……ええと、そんなんより、昨日のニュース見た!? 『救芽井エレクトロニクス』の話題!」
そんな友人達に背中を押されても、ここぞというところで尻込みしてしまうのは、彼女の難点と言わざるを得まい。彼女はあわてふためきながら、他のクラスメートが開いている雑誌に載っていた、二つの白いカラーリングの着鎧甲
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