第48話 物語の終わりと、始まり【挿絵あり】
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は恐れることなく反発する。例え相手がどんな強敵でも、龍太だけは渡さない。その想いが、彼女を必死に奮い立たせていた。
そんな二人のやり取りを聞いた他のクラスメート達は、揃ってどよめきの声を上げる。彼ら三人の三角関係を知らないのであれば、当然の反応だろう。
「え、なに? なんで救芽井さんと矢村さん、いきなりケンカしてるの!?」
「もしかして知り合い……!?」
「マジで!? 世界的アイドルと!?」
「しかも一煉寺の話が出て来たぞ! なんなの!? アイツってマジでなんなの!?」
動揺を隠せないクラスメート達をよそに、樋稟は勝者の余裕を見せ付けながら、今度は龍太の方に向き直る。
「……どう?」
「どうって……なにがだよ」
悪戯っ子のような笑みを浮かべる彼女の顔を見ると、どうしてもキスのことを思い出してしまう。それを悟られまいと、龍太は顔を左に逸らしてしまった。
しかし、彼の意図など樋稟にはお見通しである。彼女の恋心に全く気付く気配のない、龍太の方とは対照的なくらいに。
「お婿さんの話よ。鈍いあなたのことだから、質の悪い冗談だとでも誤解してそうだと思ってね。ちょっと一人でここまで来ちゃったの。シェア進出に先駆けてって意味合いもあるけど」
「……おい、それ以上からかうなよ。俺が変に勘違いしちまうぞ」
赤面した顔を見られまいと、龍太はさらに首を捻る。そんな彼の姿や気持ちが嬉しくて、樋稟は彼の机に身を寄せた。
「どうしても、納得できない?」
「できるわけ、ねーだろ。だって……俺だぞ」
高鳴る心拍に気付かれたくない一心で、龍太はそっぽを向き続ける。そんな彼の姿に、樋稟は小さくため息をつく。まるで、手の掛かる弟の面倒を見ている姉のような、困った笑顔を見せながら。
「じゃあ、もう一度……ううん、何度でも。夢でも悪戯でもないってこと、教えてあげちゃおうかな」
「は……?」
その発言に首を傾げ、龍太が樋稟の方に向き直ろうとした瞬間。
「んっ……」
少女の方へと向いていた彼の右頬に、薄い桃色の肌が押し当てられた。
「んなあぁあぁあぁああッ!?」
刹那、賀織を筆頭にしたクラス一同が、阿鼻叫喚のコーラスを奏でる。その声量は教室一帯に響き渡り、余波を受けた担任は耳を塞いで状況を静観していた。事なかれ主義を貫き、深くは関わらないつもりでいるらしい。
そして声には出さないまでも、龍太自身も驚きを隠せずにいた。
そっぽを向いていれば、いずれは愛想を尽かすだろう。そう思っていたのに、まさか相手に向けていた頬にキスされるとは、思ってもみなかったのだ。
あの日の口づけとは反対の頬に、愛情を注ぐ樋稟の顔は恍惚に染まっており、当時を上回る色香を放っていた。彼女自身、龍太へ捧げ
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