第48話 物語の終わりと、始まり【挿絵あり】
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められるのは間違いなく松霧町全域。下手をすれば、住民全員が世間から白い目で見られることになる。
仲良くしろ、というのはそういった事態を可能な限り避けていくためのものなのだ。他の男子達の心境としては、到底それどころではなかったのだが。
「おいおいウソだろ……なんで、なんであの世界的なスーパーアイドルが……!?」
「やべ、本物だよ……間違いねぇよ! 俺、もう死んでもいい……!」
「ああ、俺が生きてる意味が、今やっと見えてきた。母さん、産んでくれてありがとう……!」
対面してものの数秒で、既に彼女の虜にされる男子達。そんな彼らを傍目に見て、龍太は思わず顔を伏せる。
「ちょっとちょっと待て待て待て……! なんでアイツがここに来るんだよ!? アメリカでの仕事はどーしたんだよ……!」
ブツブツと眼前の状況に文句を垂れている彼の隣で、賀織は悔しげに口を結んでいた。
「く〜ッ……もう来よるなんて! いかん、どうしよ……このまんまやったら龍太が、龍太が……!」
ライバルの思わぬタイミングでの台頭。そのショックは大きく、彼女の胸中にある警報機は、必死に今の状況が危険であると警告していた。
「それじゃー救芽井、どっか空いてるとこ座れ」
「はい」
短い言葉を交わした後、彫像のように動かないままだった樋稟は、ようやくその華奢な脚を動かし始めた。夏服ということもあり、そのプロポーションが成せる色気たっぷりの歩みが、見事に現れていた。
その姿に男子達はもちろん、女子達までもが魅了されていく。
「すごーい……なんだかモデルみたい」
「モデルよりもっと凄いわよ! どうしよう……話し掛けられたりしたら卒倒しちゃうかも」
――ある一人の女子を除いては。
「ぐぬぬ……!」
「ふふっ、お久しぶりね。矢村さん」
樋稟が目指したのは、窓際にいる龍太の前にある席だった。その龍太の隣にいる賀織と目が合った途端、彼女は突然、勝ち誇るような笑みを浮かべる。
一方、賀織はそんな彼女を睨み上げ、艶やかな唇を噛み締めた。さながら、得点のチャンスを土壇場で逃してしまったスポーツ選手のように。
「その様子だと、一年以上もチャンスを上げたのに、まるで進展がなかったみたいね。残念だけど、私の勝ちよ」
「だ、誰が負けたりするんや! フン、アタシは長いこと龍太と一緒におるんやで。あんたとは経験の差があるんやけんなっ!」
「ふふ、お好きなだけどうぞ。でも確かに、キャリアでは私の方が劣るのは事実よね。結局はあなたのその貧相なボディで、彼が喜べばの話ですけど?」
「うう、うるさーい! この乳牛っ! 龍太は、龍太は、小さい方が好きなんやからなっ!」
今や人々を魅了するアイドルとなっている救芽井に対し、賀織
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