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フルメタル・アクションヒーローズ
第48話 物語の終わりと、始まり【挿絵あり】
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言っていたのだ、彼らはそんなことは気にならないらしい。「転校生の女の子」が来た……というその一点にしか、注目していないようだった。

「まぁ、もうどーでもいいか……んじゃ、入れ。救芽井」

 ――そして、担任が放った一言により、教室全体が静まり返る。

「え? 救芽井……?」
「なんかどっかで聞いたことあるような……」
「アレじゃね? 『着払いなんとか』ってヤツ作ってた会社」
「『着鎧甲冑』でしょ、常識的に考えて。ていうか、あんな珍しい名字が他にいたのね……」

 今度は男子だけではなく、女子も一緒に騒ぎはじめた。担任の口から出て来た「救芽井」という姓を聞けば、世界的な知名度を持っている、あの美少女を連想せずにはいられないからだ。

 そしてそれは、龍太と賀織も同じであった。二人は顔を見合わせ、同時に目を見開く。

「救芽井……そんな、うそやろ!?」
「日本に来るとは聞いてたけど、まさかそんな……!?」

 そうして彼らが狼狽している間に、ついにドアが開かれる。担任とは違い、なるべく音を立てないように、ゆっくりと。

 誰もが固唾を飲んで凝視する中、その転校生は川を流れるような静かな歩みで、教壇の傍まで足を運ぶ。次の瞬間、クラス全体が驚愕の余り固まってしまったのは言うまでもない。

 茶色のショートヘア、汚れのない湖のような碧眼。美の神の産物と呼ばれる目鼻立ち。そしてスレンダーな体型に反して、豊満に飛び出した胸。
 紛れも無い、今世間の話題をさらっている、あの美少女だったのだから。

 そんな彼らを前にして、その転校生――否、麗しく成長した救芽井樋稟は、担任と頷き合うと共に、チョークを取って黒板に自分の名を書き上げる。

「この度、アメリカよりこちらの学校に編入させて頂きました、救芽井樋稟といいます。皆様、まだここではわからないことばかりですが、私にできることは何でも尽くしていくつもりですので、何卒よろしくお願いいたしますね」

 続けて、自分の姿に固まっているクラスメート達に対し、悠然とした態度で自己紹介をした。その冥界から舞い降りる天使のような笑みは、男子生徒達の心を根こそぎ奪い去っていく。

 ――ある一人の男子を除いては。

「あー……知ってるヤツがほとんどだと思うが、彼女はアメリカからの帰国子女ってとこだ。何でも親御さんの意向で、こんなド田舎の町までやって来たらしい。つーわけだからテメーら、ちゃんと仲良くしてやんねぇと、この嬢ちゃんのバックにブッ潰されんぞ」

 そこで出て来た担任の言葉で、ようやく龍太は「社会的に」が強く言われていた理由を悟る。

 こんなド田舎の名もない町に、世界中にファンがいるスターが飛び込んできたのだ。そんな中で、彼女の身によからぬことでも起これば、責
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