第48話 物語の終わりと、始まり【挿絵あり】
[6/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
して、談笑していたクラスメート達は渋々と自分の席へと引き返していく。
「よ〜し、んじゃ早速始めっぞ。テメーら美人の女教師とかじゃなくて残念だったなオラァ」
無精髭が似合い、今の龍太に匹敵する負のオーラを噴出している担任教師。四十代前後のその教師は、細く萎びた目線を龍太と賀織に向ける。
「オメーもさっさと席につけ、矢村ぁ。ヤるのは勝手だが、そん時はせめて屋上に行けよ。ここでは盛んな」
「だだ、誰がそんな破廉恥なことするんや!? 先生は関係ないけんッ!」
スカートの裾を抑え、頬を赤らめた賀織が絶叫する。その仕草に、男子一同は興奮の余り、彼女に負けじと顔を紅潮させた。中には鼻血を噴き出し、椅子から転落する者もいる。
「矢村の赤面キター! たまんねぇよオイ!」
「一煉寺死ね〜! 今すぐ死ね、今死ね!」
「そんな奴に賀織ちゃんの純潔を渡してなるものか! 一煉寺に奪われるくらいなら、いっそのこと僕が――」
「テメーらの赤面なんて誰が得すんだよキメェな。いいから座れ、転校生が教室に入れねーだろーが」
今がホームルームであることを完全に度外視して、各々で騒ぎ出すクラスメートの男子一同。そんな男性陣を冷ややかに見ている女性陣を代弁するかのように、担任がバッサリと言い斬った。
痛い点を突かれ、それに耐えうるバイタリティも持たない彼らは、敢なくその言葉の前に沈没していく。「キメェ」と両断されてしまった男子達は、萎む風船のように各々の席に縮こまって行った。
その過程で、クラスメートの一人が眉を吊り上げる。
「……転校生……だと……!?」
「ん? あぁ、まぁそうだ。一緒に勉強するのは二学期からになるが、その前に挨拶くらいは済ました方が、本人の為になるって思ってな。聞かれる前に答えとくが、一応女だぜ」
刹那、呟いたその生徒が、何かに覚醒したかのような眼光を放つ。奇跡の存在を、今、確かめたかのように。
「――うおぉぉおおッ!」
そして天さえ突き破りそうな程の、歓喜の叫び。彼をその筆頭として、数多の男子生徒達が狂喜のオーケストラを巻き起こした。
転校生の女の子。ボーイ・ミーツ・ガールを信じる男子なら、一度は憧れるシチュエーションだろう。クラスメートの男性陣は今、自分達の楽園をこの教室に見出だそうとしていた。
「じゃーまー、取りあえず入れるぜ。テメーら仲良くしてやんねーと、社会的にヤバイぞ」
忠告するような担任の口調に、龍太は眉をひそめる。
「社会的に……? 仲良しを求めるだけにしちゃあ、妙な脅し文句だな」
そんな彼の疑念をよそに、男性陣は腕や腰を振って転校生の到来に喜び、テンションを限界まで高めようとしていた。
担任はかなり「社会的に」という部分を強調して
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ