第48話 物語の終わりと、始まり【挿絵あり】
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冑を指差す。
その両方は「救済の先駆者」と全く同じフォルムであったが、ボディの基調が白という相違点があった。
また、雑誌にある写真からは、片方は腰に「救済の先駆者」と同じ救護用バックルを装備し、もう片方にはそれがない代わりにメカニカルな警棒を腰に提げている、という差異が見受けられる。
彼女は自分の恋心を悟られる展開を恥じらう余り、そんな別の話題を持ち出してしまった。
「ああ、見た見た。えーと、もうじき日本にも着鎧甲冑のシェアを広げるってヤツか?」
しかし幸か不幸か、それは龍太にとっても関心のある話題であり、結果として賀織の話はうやむやになってしまう。
彼は窓の外に広がる景色を眺め、遠い場所を見るような目になる。救芽井の名を聞くと、あの少女を思い出さずにはいられないからだ。
――あれからアメリカに帰還した救芽井家は、次世代レスキュースーツ「着鎧甲冑」を正式に発表し、それを取り扱う企業「救芽井エレクトロニクス」を創設した。
それもはじめは小さな会社であり、世間的にはそれほど注目はされていなかった。しかし、救芽井樋稟が着鎧する「救済の先駆者」がマフィア退治や人命救助に奔走するうちに、徐々に知名度が上がり、今やアメリカ本社を中心に世界的な活躍を見せる、一大企業へと成長したのだ。
その商品である、初の量産型着鎧甲冑「救済の龍勇者」の存在は、世界中に衝撃を与えた。一瞬で装着され、どんな危険も乗り越えて人命を救いに行く、ヒーロースーツの誕生。それは、テレビの中にしかいなかったヒーローの実現、とも言えただろう。
しかし、着鎧甲冑を一台生産するのには莫大なコストを消費してしまうため、大企業となった今でも、救芽井エレクトロニクスの所有する「救済の龍勇者」は、二十五台しか存在していない。
それは、救芽井家が持つ特許権により、着鎧甲冑の軍用禁止令が出されていることも起因していた。
製品版である「救済の龍勇者」の発表当初から、軍需企業からの誘いは数多くあった。しかし、救芽井家は「強行手段で兵器転用を目論む者が出ていた」という背景を元手に、それらを全面的にシャットダウンしていた。
誘拐の罪に問われ、アメリカの刑務所に拘置された古我知剣一の例を出されては、表立って軍用を主張することは難しい。軍需企業の面々は、身を引く決断を強いられていた。
これにより、着鎧甲冑が発展していくための足掛かりを失うのではないか。古我知剣一が感じていた懸念が、まさにその事態なのだ。
それでも軍事が発達しているアメリカ国内では、着鎧甲冑の兵器化を求める声は少なからず存在していた。社会契約論を基に、「アメリカの企業なのだからアメリカの国益に協力すべき」という意見が数多く出回り、レスキュー用以外への進出が求められて
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