第47話 通学までの道のり
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か。その経緯を知らない龍太は、不用意に前に出ようとする。
「ダ、ダメッ! いかん! 行ったらいかん、行ったら龍太、殴られてまう!」
そんな彼の腕を懸命に引っ張り、賀織はなんとか引き止めようと奮闘する。なぜ彼女がそこまでして、自分と武章を合わせまいとしているのか、龍太は理解できずにいた。
「はぁ? なんでそんなことになるんだよ」
「そ、それは……」
理由を問われ、思わず彼女は口ごもってしまう。それに正直に答えることは、告白するのに等しい行為であるからだ。
大工の棟梁である武章は、娘の賀織をとにかく溺愛している。彼を尻に敷いている妻が、呆れてしまうほどに。
それゆえに、彼女の傍に男が纏わり付くことを激しく嫌っているのだ。一家揃って松霧町に移り住んでから、数年の間に従えさせた弟子達に、賀織の護衛をさせたこともある。
そんな彼が、こうして家の前で見張っているのは、龍太の存在を知ったからであることに他ならない。
賀織は父の行動が災いして龍太に避けられる事態を恐れ、彼の前で想い人の話はしないように心掛けていた。
その代わり、父と違って自分の恋を理解し、応援してくれる母には、いつも龍太のことを嬉々として語っていたのだ。娘が恋をしていることを喜び、応援したいと願っている母にとっても、龍太の話は楽しみの一つになっていた。
しかし、家族に隠し事は通じないもの。
妻と娘の会話を偶然耳にしてしまった武章は、当然ながら大激怒。松霧高校に乗り込み、龍太を引きずり出そうと言い出したのだ。
なんとかその場は母の威圧で収めたのだが、それ以来何かと龍太のことで口出しをするようになった武章に、賀織はほとほと困り果ててしまった。
今こうして待ち伏せているのは、賀織と一緒に登校してくるであろう一煉寺龍太を確保し、制裁を加えるためであることは火を見るよりも明らかだ。
もちろんこのまま龍太を行かせて一悶着を起こせば、自分達の関係に亀裂が入りかねない。そんな不安を抱える彼女としては、是が非でも彼を進ませるわけにはいかなかった。
かといって、事情を話してしまえば自分の気持ちまで知られてしまう。もしそれで距離を置かれたら……と考えてしまう賀織は、さらなる不安に苛まれた。
とにかくこの状況を切り抜けるには、遠回りをするしかない。賀織は無理矢理龍太の手を引っ張ると、大回りをするルートを使い、商店街を目指すことを考えた。こうなる事態を想定し、自宅前を避ける道のりをあらかじめ発見していたのだ。
「とにかくこっち来ぃや! お父ちゃんがおったら学校まで行けんのやから!」
「おい、なんで行けないんだよ? 別に俺は殴られるようなことなんてしてないんだし。そもそも面識すらないってのに」
「え、えと、アタシのお父ちゃんって見境
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