第45話 終わりよければ全てよし
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を去れるように。
◇
俺の脳内予定の上では、もっと他にいろいろなところを回っていくつもりだったのだが、初めてのダンスパーティにハッスルし過ぎてしまっていたらしい。
パーティが終わる頃には、時刻は既に十一時半を過ぎていたのだ。
せっかくの最後の外出だったのに、ほとんどダンスだけで時間を潰してしまった。その事実に青ざめる俺だったが、救芽井はそのことで怒ることはなかった。
「ありがとう……すごく、楽しかった」
それどころか、そんなお礼まで言ってくれたのだ。その時の切なげな表情を見れば、もっといろいろと見て回りたかった気持ちがあったことくらい、俺でもわかるのに。
ここまで来て気を遣われるなんて、ほとほと俺も堕ちたもんだなぁ……。彼女はきっと大人だから、その辺もしっかりしてるんだろう。
だが、落ち込んでいる暇はない。
こうなれば、せめて見送る瞬間までは笑顔でいないとダメだ。変にテンションを下げて、これ以上気を遣わせたら男の尊厳にかかわる!
……つっても、とうとう変態のレッテルは剥がせなかったみたいだけどね。別に救芽井との結婚までは望まないから、せめて普通に呼ぶようになって欲しかったよ……グスン。
大急ぎで救芽井家まで引き返した頃には、既に家族全員が出発準備を終えているようだった。
大型トラックに荷物(と古我知さん)を全て積み込み、救芽井とゴロマルさんが暮らしていた家からは、「救芽井」の札が無くなっている。
「おぅ、二人とも! 随分と遅いお帰りじゃったのう」
「お帰りなさい。いい思い出は、出来た?」
トラックから身を乗り出したゴロマルさんと華稟さんが、俺達を出迎える。救芽井は笑顔でピースサインを送ると、クルリと俺に向き直った。
「じゃあ、私達……帰らなくちゃ。ありがとう。本当に、ありがとう……」
救芽井の、どこか悲しげな笑顔。それを見ていられなかった俺は、必死に言葉を探す。
変態呼ばわりをやめて欲しいのも、見送る瞬間には笑顔でいて欲しいのも、全ては「終わりよければ全てよし」とするためだ。
彼女がちゃんと笑ってくれなかったら、変態呼ばわりのまんまで終わる以上に後味が悪い!
「最後なんだぜ? もっと笑おうよ、ずっと変態扱いのままでもいいからさ!」
結局口にしたのは、そんなストレートな主張でしかなかった。こんな時に気の利いた台詞が言えない、俺のボキャブラリーが恨めしい……!
「ふふ、あなたらしいわ。ずっとそのこと、気にしてたの?」
「あ、当たり前だろ!」
一方で、向こうは俺の死活問題を相当軽く見ていたらしい。思わずじだんだを踏み、憤慨してしまう。
「樋稟、零時を回った。急ぎなさい」
すると、彼女越しに甲侍郎さんの呼び声
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ