第45話 終わりよければ全てよし
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痛いぃ!」
「お、お前、鼻血やべーぞ!」
「てめぇ、やや、やりやがったな!」
今度はもう一人が掛かって来る。俺は条件反射で片膝を上げ、待ち蹴の体勢を作った。
「ひいっ!」
それだけで、なにかしてくると思ったのか、そいつは戦意をなくしてしまっていた。蹴りのフォームに怯むと、すぐさま引っ込んでしまう。
「い、行こうぜ……わけわかんねーよ、もう……!」
「ひぅ、痛い、痛いよぉ……!」
連中は鼻血が垂れ流しになっている仲間を引きずり、ズルズルと撤退していく。俺はいじめていた相手を退けたことで、少しの安堵と多くの悔いを噛み締めて、救芽井の方へと向き直る。
「……あんなのにいじめられてたの? 変態君が?」
「まぁ、そういう時代もあるってこったな」
こんな暴力のために、俺は鍛えられていたわけじゃない。そのことを忘れたら、俺はどこまでも誰かを傷つけてしまうのだろう。そんな正義の味方はきっと、彼女の望むところじゃない。
……カッコつけたことばっかり考えてるみたいで、正直我ながらうすら寒いけど……これぐらいの気持ちがなきゃ、この娘と仲直りできる見込みなんてこれっぽちもないのだろう。
――損な役回りだよな、王子様ってさ。
◇
そのあと、俺達は商店街の中へと進んでいく。クリスマスの夜というだけあって、辺りの賑わいは最高潮だった。
職人業のイルミネーションが町並みを彩り、サンタの格好をした人々が風船やプレゼントを、子供達に笑顔で配っている。
中央に立てられたクリスマスツリーは、噴水まで用意された豪華な仕上げになっていた。この町でこのクオリティは、相当な大盤振る舞いなのである。
「綺麗ね……」
「年に一回の一大イベントだしな。今夜が『クリスマス』の最後なんだから、なおさらだ」
飾り付け以上にキラキラしている救芽井の手を引くと、俺は噴水の近くの石垣に腰掛けた。彼女もそれに続き、俺の傍に腰を降ろす。
「よくやってくれたよ、お前は」
「えっ?」
「お前がここに来てくれなかったら、絶対誰かは不幸になってた。この町を守ってくれて、ありがとな」
彼女の顔を覗き込むような格好で、俺はニッと笑う。微笑んだってキモいだけだし、どうせなら思い切り顔を崩して笑った方がいいだろう。
「そ、そんな! お礼を言わなきゃいけないのは、私の方なのに……。さっきだって、私をあんなに守ってくれて……」
「そりゃあ、お前に何かあったらマズいんだから当然だろ? お前はここからが大事なんだからさ」
「もう、それはお互い様でしょ? あなたこそちゃんと受験勉強頑張らないと、矢村さんが泣いちゃうわよ? さっきみたいに」
「そ、それはそうだな、ハハ……」
俺が冷や汗を流して頬を掻くと、救芽
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