第45話 終わりよければ全てよし
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る。
救芽井は「解放の先導者」に対して一騎当千の強さを見せ付けるほどの、格闘センスがある。対して、向こうは俺一人にてこずってたようなドシロウト集団。
しかも、連中はその力量差を知らないまま、彼女を挑発している。下手をすれば、ブチ切れた彼女が三人を病院送りにしかねん……!
俺だったらケンカしたって「所詮一煉寺だから」で終わるけど、彼女はそれじゃ済まされない。ゆくゆくは「着鎧甲冑」という発明品にとって、なくてはならない存在になるはずなんだから、こんな厄介ごとの巻き添えを喰らってる場合じゃない。
負けることはないにしても、万一のことを考えて、彼女を危険から遠ざける。それは別に、悪いことでもないはずだ。
「あーその、頼むから今回は見逃してくれよ。さっき言ったように、あんまり時間を無駄にしたくないんだ」
「ウゼェんだよクソが! さっさと家に帰ってシコってろ!」
「よくも彼にそんな口を……許せない!」
「なんだよこの女、まさか一煉寺がイイってのか? イカレてるぜ」
……彼女を庇うつもりが、余計に話をこじらせてしまったようだ。俺を罵倒する男子達に救芽井がさらに怒り、その彼女を連中が睨む、という構図になっている。
つーか、家族のことならまだしも、俺のことでまで怒っててどうすんだよ……カルシウムが足りなくなるぞ。
「……ヤロー、さてはもう女にハメやがったな? いじめられてた分際で、処女を奪って童貞卒業なんて百年はえーんだよッ!」
すると連中の一人が、とんでもないミスリードを起こして殴り掛かってきた!
「――っく!」
だが、それはもう、俺をいじめる力にはなりえなかった。相手の拳よりも先に、とっさに飛び出ていた俺の熊手が、その顔面を打ち抜いていたからだ。
鼻血が辺りに飛び散り、彼は尻餅をつく。その様は、到底去年まで俺をいじめていたような奴の姿には思えないものだった。
――ろくにケンカだってしたことがない。正しくは、ケンカらしいケンカをする前にやられていた。
そんな俺が、兄貴の拳法を使った途端にコレだ。今までは失敗を恐れて使えなかった技だが、古我知さんを倒した後だからか……全く技の出に、迷いがなくなっていたのだ。
ただ技が使えた、というだけじゃ、ここまで上手くは行かなかっただろう。素手で「解放の先導者」を破壊できる程の鉄人である兄貴の教えがあったから、いつの間にかここまで強くなっていたんだ。
もちろん兄貴に比べりゃ、俺なんて白帯すらおこがましい程のペーペーだ。それでも――救芽井を守ることはできた。
……だが、それは彼らを傷つけた事実にも直結する。古我知さんと何も変わらない、ヒーローからは程遠い存在だ。そういう意味じゃ、俺と彼は紙一重だったのかもしれない。
「い、痛い!
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