第43話 矢村さんがアップを始めました
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辞書に『疲れ』という文字はないの!?」
「わしらは今夜出発する前提で、しっかり休息を取っておるからのぅ。むしろ、目覚めたばかりのお前さんや、眠らなかった賀織ちゃんの方が辛いじゃろうな」
俺達兄弟が未練がましく垂れ流すクレームを、ゴロマルさんがアッサリと受け流してしまう。
……そういや、矢村は俺のために眠らずにいたんだよな。ふと気になって、救芽井の腕に抱えられて眠っている、彼女の寝顔を観察した。
見てるこっちが眠気を貰いそうな程、ぐっすりと寝ている――が、よく見れば目元が赤く晴れているのがわかった。どう見ても、さっき泣いてたせいだけじゃない。
「――恋人でもないのに、無茶しやがって。人生、ドブに捨て過ぎなんだよ、お前は」
俺なんかのために、心配したり傷付いたり。そんなの、この娘には似合わないはずなのに。
なんだって彼女は、ここまで俺にこだわるんだろう。――まぁ目を覚ましたら、「ありがとう」くらいは言わなきゃな。
「一煉寺君。いいかね」
「は、はい?」
「短い間だが、君には本当に救われたな。改めて礼を言いたい――ところだが、それ以上にやって欲しいことがある」
不意に甲侍郎さんに声を掛けられ、俺は思わず訝しんでしまう。この期に及んで、俺に何をやれと申される……?
無意識のうちに身構えていた俺に対し、彼は凄むような口調で――
「樋稟と二人で、町に出掛けたまえ」
――妙な指令を下してきたのだった。
えっと、それって……いわゆるデート?
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