第43話 矢村さんがアップを始めました
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
……」
顔は合わせず、しかし距離は近く。俺達は何気ない言葉を交わし、互いの無事を、温もりを通じて確かめ合った。
「……すぅ」
「ん? おい、矢村?」
ふと、彼女の身体が急に重くなったことに驚いた俺は、その小さな肩を押して矢村の顔を確認する。
……眠っていた。
まるで憑き物が取れたかのような、安らぎに満ちた寝顔。見ているだけで癒されるような、そんな幸せな顔をしていた。
「あの日からずっと、あなたを想って眠らなかったそうなの。そっと、しておいてあげて」
聞き慣れた声に思わず顔を上げると、そこには彼女と同じように涙に濡れた、救芽井の姿。彼女は労るような眼差しを矢村に向け、その小さな身体を優しく抱き寄せる。
「私は体力の消耗が激しかったから、つい数時間前まで眠っていたんだけれど……矢村さんは、ずっとあなたを心配してたのよ。夜が明けても、日が暮れても」
「夜が明けて……? そういえば、あれからどれくらいの時間が経ったんだ?」
眠りに落ちた矢村を抱き上げる救芽井に、俺は身を起こして問い掛ける。矢村がこんなに疲れるまで起きていたって、どういうことなんだよ?
「今は二十五日の午後九時じゃ。今頃は、クリスマスで町が賑わっておるじゃろう」
ゴロマルさんが横から出した回答に、俺の思考回路が一瞬だけ停止する。
え? 二十五日? 午後九時? ――てことは、俺は丸一日メディックシステムのカプセルで寝てたってことなのか!?
う、嘘だろ……午前中みっちりしごかれて半殺しにされても、五分入ってるだけで全快出来たってのに!
「なんでそんなに寝てたんだ俺!?」
「脇腹を撃たれて重体だったことに加えて、あれだけの激しい戦闘の傷を負ったんじゃ。しかも、真冬の夜にその黒シャツ一枚という格好だったせいで、体力の消耗も一番酷かった。わしとしては、よく一日で回復したものじゃと驚いたくらいじゃよ」
今の俺の格好を指差して、ゴロマルさんはため息混じりに言う。あれま、よく見れば俺って、未だにこの黒シャツ姿のままだったんだな。
確かにこの格好でクリスマスイブの夜は死ねる……。ていうか――
「……俺はどうやって助かったんだ?」
思えば、その辺がまだよく聞けてなかった気がする。ゴロマルさんが助けてくれたんだなーってのは薄々わかるんだけど、具体的にどうなってたのかが気掛かりだ。
「――わしは、この事件が起きた原因に繋がる者として、決着を見届ける必要があるのではと思っての。不躾ではあるが、龍亮君に留守を任せてお前さん達の様子を見に行ったんじゃよ」
「そうそう。寂しかったんだぜー? 行けるもんなら俺も助けに行きたかったよ」
「万が一という場合を考えれば、龍亮君の方が適任ではあったのは確かじゃ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ