第39話 死に損ないのヒーローもどき
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ピクリとも動けずにいた。
ここに来たときには引っ切りなしに響いていた機械音が、今はまるで聞こえて来ない。これほど静かだと、かえって不気味だな。
……ちょっと待て。古我知さんはどこに行ったんだ? それに、救芽井や矢村は!?
さっき人っ子一人いないとは言ったが、よくよく考えると、これはおかしい。ふとそれに気づいてあちこちに視線を移すが、彼ら三人の姿は――やはり見当たらない。
ま、まさか救芽井が……! それに、矢村まで……!?
「……んッ!?」
目が覚めて早々、ヒーローを気取ってまで守ろうとした二人を見失うとは。そんな自分の失態に焦りながらも、俺はあるものを見つける。
今ここに存在し、俺が撃たれる前にはなかったはずのもの。それに気がついたのは、周囲の明るさに気がついた時だった。
俺がここに来たときは、この部屋は薄暗く……十メートル先が見づらくなるような場所だった。しかし、今はフロア全体が明るめになっており、部屋の隅々――それこそ壊れた照明の数まで、ハッキリと見えるようになっている。
なんだ……? 俺が寝てる間に一体何が――
「さぶっ!?」
元々、あるのかどうかも怪しい知能を働かせようとした瞬間、俺の全身をクリスマスイブの冷気が貫いた。――心まで。
……まぁ、着鎧甲冑を着てるときは暖かかったからな。それに、今は黒シャツだけって状態だし。
だけど、これはちょっと寒すぎじゃないかい? それに、かなり奥の部屋だってのに風まで吹き込んでるし……。俺は素肌を晒している両腕を摩りながら、その風の入口に視線を送る。
――どうやら、その入口ってのが、この明るさの正体だったらしい。
俺が戦ってた時には、間違いなくなかったはずの、高さ二メートル程の大穴が開けられていたのだ。
力任せにこじ開けられたのか、その辺りの壁や鉄骨が無残にひしゃげている。これはもしかして……いや、もしかしなくても……!
「うっ、ぐ……! はぁ、はぁっ……!」
俺は寒さに凍え、傷の痛みに歯を食いしばりながら、自分の身体を引きずるように歩き出す。
例の穴からは月明かりが差し込んでおり、それがこのフロアの全貌を鮮明にしていたらしい。つまり、この穴からは外に繋がってるってわけだ。
この穴を潜った先にあるもの……それはきっと、廃工場と隣接した採石場だろう。地元に詳しくない古我知さんが、救芽井達を人気のない場所に連れていくとしたら――そこしか考えられない!
……しかしまぁ、辛いもんだよなぁ。
銃で撃たれるのなんて、当たり前だけど初めてだし。すげー……痛いし。血も出てるし。
おまけにイブの夜に黒シャツ一枚で死ぬほど寒くて……既に手先に感覚がない、ときた。
普通なら、即救急車呼んで、早急に病院の暖
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