第38話 死亡フラグを建てた覚えはない
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
けばこんなことにはッ!
焦る気持ちが反映されるかのように、「呪詛の伝導者」との距離も縮まってきた。
だが、そんな進捗状況に喜ぶ暇もなく、彼が救芽井達の眼前にたどり着いてしまった!
「――やめろぉぉぉーッ!」
反射的に身体の芯から、言葉が噴き出して来る。強盗の一件で、救芽井が唇を奪われそうになった時に近い感覚だ。
怯ませる結果にでもなったのか――その叫びが「呪詛の伝導者」の動きを一瞬だけ止めた。その僅かな時間で発生した硬直に乗じて、俺は完全に彼に追い付く。そしてピッタリと彼の身体にしがみつき、拘束を試みた。
――それが、罠だとも知らずに。
「……ッ!?」
「言ったはずだよ。僕は――負けられないんだってね!」
脇腹に押し当てられた、冷たく硬い感触。それがピストルの銃口だと気づいた頃には――乾いた銃声がパン、と響いていた。
ここまで密着した状態から撃たれたら、着鎧甲冑の防御効果なんてヘノカッパなんだろう。現に、弾丸に貫かれた部分はスーツが裂け、鮮血が噴き出している。
……あぁちくしょう。こりゃあ、やられたな。初めから、俺に大急ぎで追い掛けさせることが目的だったらしい。
そうなったら、少林寺拳法を使う余裕なんてなくなる。そうして自分を救芽井達から引き離そうと、無我夢中になってるところへ、ゼロ距離射撃をパン――ってわけか。
撃たれたせいで、頭に上ってた血が抜けたのか……命のやり取りしてるってのに、自分でもビックリするくらい冷静になってる。――俺、まんまと嵌められちまったらしい。
視界がぐらり、と歪んだかと思えば……天井が見えてきた。あぁ、倒れたんだな、俺。
震える手で脇腹を触り、それを眼前に出してみると――真っ赤な手形が、出来上がっている。その手が生身の手だったことから、着鎧が解けちまってるのがわかった。
……どうやら、俺の負け、みたいだなぁ。
――だが、勝利者であるはずの古我知さんは、なんだか浮かない顔をしている。それどころか、「や、やってもたー!」って感じの顔だ。
……あぁ、そっか。あんたも、ホントはこんなこと、したくなかったんだっけか。全く、お互い苦労するよなぁ、へへへ……。
「……あ、あぁあ……!」
「い、いやあああぁぁああーッ!」
――矢村は「どうしたらいいかわかんない」って顔して呻いてるし、救芽井はもうどうしようもないくらい、すんごい悲鳴上げてるし……なんでこんなことになっちまったかなぁ。
俺はただ、変態呼ばわりを止めて欲しかったって、それだけだったはずなんだけど……なぁ。
……あら、なんか眠くなってきた。
それに、身体全体の感覚もなんだか冷たい。これ、冬のせいだけじゃないよな……?
おかしい、な……まだ、死
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ