第37話 ヒーローにピンチは付き物
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彼らを催眠から解放すると言うのなら、稟吾郎丸さんや樋稟ちゃんに頼むといい。もっとも――それを『僕ら』が見過ごすはずもないけどねッ!」
どうやら、向こうは容赦を捨てる覚悟らしい。俺を完全包囲した上で、『呪詛の伝導者』を筆頭に全ての『解放の先導者』が銃口を向けてきた。
こんなドーナツ状に囲んだ状態から発砲なんてしたら、相打ちくらい起こりそうなもんだが……連中にためらいの気配はない。機械なんだからためらう方が不思議だけど。
「解放の先導者」だけがそうであるならまだしも、一応は中身が人間である「呪詛の伝導者」までもがピストルを向けている。自分は撃たれても平気だと踏んでるのか、それとも撃たれてでも俺を「討つ」つもりなのか……。
いずれにしろ、俺がピンチなのには変わりない。とうとう年貢の納め時……かなぁ?
「君の――君達の健闘は、よく覚えておくよ。『呪詛の伝導者』の売り込み先に宣伝しておきたいくらいだ」
「そんなもんどーだっていいんで、助けてください……とか言っちゃダメか?」
「悪の組織と戦う正義の味方が、それを口にしたらおしまいだろう? 却下だ」
「……ま、そうだろな。マジで言う気もさらさらねーし」
ヒーローというモノほど、実現するには程遠い仕事はないらしい。下手すりゃ、増えすぎた人口を宇宙に移民させる方が簡単なのかもな。
漫画やラノベのような、カッコよくみんなを助けるヒーローになるってのは……俺にはキツかったのかね。変態呼ばわりの汚名くらい、返上したかったなぁ……。
――悪いな、兄貴。ちょっと、ゲームオーバーみたいだわ。
「よく言ったね。じゃあ――さよならだ! 撃てえぇーッ!」
「呪詛の伝導者」の手中にあるピストルが火を噴き、俺の眉間に命中する。
「ぐぅぅッ……!」
割と距離があったおかげで、脳は着鎧甲冑の装甲が守ってくれたが――強いショックを受けたせいか、体が思うように動かない。脳みそに弾丸撃ち込まれたんだ。衝撃の影響がないはずがない。
それに加え、今度は「解放の先導者」の一斉砲火が来るわけか……さすがにコレには耐えられないんだろうなぁ。
きっとこの後、俺はダメージを受けすぎたせいで着鎧を解除され、気がついた頃には全てを忘れているんだろう。恐らく、救芽井や矢村も。……ひょっとしたら、兄貴までも?
……あぁ、やっちまったなぁ。
安易に深追いするんじゃ、なかった……。
俺はこのあとに襲って来るであろう激痛と気絶に備え、ギュッと目を閉じた。
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