第36話 暗いのも怖いのも、大嫌い
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……まーそんな感じで、俺は古我知さんに対抗するための特訓を、短時間で済ましていた。特訓と言っても、実戦で少林寺拳法を使えるようにしておくための「肩慣らし」のようなものだったんだけどな。
「こ、こんな戦法、データには――くそォッ!」
「――そこだァッ!」
向こうは少林寺拳法のことは多少知っているようであったが、詳しい技の概要にはさして詳しくないらしい。自分がこさえた情報にない戦い方をされ、明らかに動きが動揺から鈍って来ている。
周りの「解放の先導者」は、主人が焦っているにもかかわらず、加勢もせずにガン見しているだけ。こっちの隙を伺ってるみたいだな……。
やがて古我知さんは、剣もピストルも火炎放射も使わない、純粋な脚力に任せた回し蹴りを放ってくる。しかしそれは、俺の目で見るならどうしようもなくド素人なキックだった。
まぁ、当たり前だよな。彼は俺や救芽井のように、格闘技の心得があるわけじゃない。「呪詛の伝導者」のボディの下には、細くなよなよしい身体が隠されているってわけだ。
古我知さんはなんとか流れを変えたいと思っているのか、右足で破れかぶれな回し蹴りを繰り出す。その瞬間、俺は振り子の如く曲線を描く彼の脚に、胸を向けるように身体を左に捻る。
そして、右足を前にした構えで、すり足をしながら素早く前進し――古我知さんの蹴りが俺を打ち抜くより先に、彼の懐に入り込む。
「え!?」
間髪入れずに、伸びきった彼の蹴り足を左腕で掬い上げるように挟み、同時に古我知さんの首筋に当たる部分に手刀を入れて牽制。
「はあァッ!」
そして、蹴り足を持ち上げられた瞬間にチョップを入れられ、完全に体勢を崩されてしまった彼を――力の限り押し倒す。
普通なら後ろに転ぶくらいで済むが、これは着鎧甲冑同士の戦い。
「うわああぁ〜ッ!」
その程度で終わるはずもなく……少林寺拳法の技「すくい投げ」を受けた「呪詛の伝導者」は、大砲で打ち出されたかのように吹っ飛ばされてしまった。
そして、錆びた張りぼての壁を突き破って奥のフロアへ転がって行く。吹っ飛びすぎだろ常識的に考えて……。
「す、すごい……やっぱ龍太はかっこええなぁ……!」
「へ、変態君……!? あなたは一体……」
さすがにここまで抵抗するとは予想していなかったのか、矢村も救芽井もかなりたまげている様子だ。元々役立たずだったのは確かだけど、そこまで露骨に驚かれるとちょっと凹む……。
「前に言ったろ。『正義の味方』だってさ!」
しかし、しょげてる場合ではない。少林寺拳法の「守主攻従」に基づいたカウンター戦法――と言っても、丸腰には変わりないのだ。
さっさと距離を詰めて接近戦に持ち込まないと、蜂の巣にされかねない。
俺は彼女
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