第35話 一時間前の特訓
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ミングアウトしやがる。矢村は驚きと羨望の眼差しを、俺と兄貴に交互に向けていた。あのね矢村さん、スゴイのは兄貴だからね? 俺関係ないからね?
つーかなんだよ……なんでそんな重大な話、俺に隠してたんだ!? ――あ、俺に絡めなくなるからってさっき言ってたっけ。この鬱陶しいブラコンめ、貴様が姉だったら最高のシチュエーションだったのに……。
……いや、今大事なのはそこじゃない。最近いろいろと非常識なことが頻発してるせいで、感覚が麻痺してるとしか思えないが――今さら、兄貴の衝撃的正体にビビってなんかいられない。
問題なのは、俺が兄貴から教わった少林寺拳法を使えば「呪詛の伝導者」に勝てるという、ゴロマルさんの根拠だ。
「お前さんのお兄さん――龍亮君の実力は、この現場が証明しておる。彼は人間の急所を持っていない『解放の先導者』を、着鎧甲冑すら使わずに『素手で』仕留めてしもうた。それだけの達人に手ほどきを受けたお前さんが、『救済の先駆者』となってその拳を振るうなら――なにかが起きるとは考えられんかね?」
「お、俺はそんなっ……!」
「古我知さんのことは俺もショックだったが……お前が自分や大事な友達を守りたいってんなら、俺が教えた拳法は役に立つだろう。その技で、彼を止めてくれるんなら――俺としても本望さ。お前はパワーこそ足りないが、急所を狙う突き蹴りの精度はピカイチだったし」
兄貴もゴロマルも、無理難題を言ってくれる。兄貴がそんなに強かったからって、俺もそんなに強いとは限らない。事実、「解放の先導者」には手も足も出なかったんだ。
「お前さんの拳法が『解放の先導者』に通じなかったのは、連中のボディに人体の急所がなかったからじゃろう? それに対して『呪詛の伝導者』は、いかに強靭な着鎧甲冑といえども中身は生粋の『人間』。余計な武装を持たない分、運動性に秀でている『救済の先駆者』のスーツで、『人体の急所』を突く少林寺拳法を使えば――」
「俺のかわいい弟が、晴れて松霧町のスーパーヒーロー……ってワケだ。古我知さん、結構いい人だったからなぁ。なんとか悪いことする前に、止めてもらわないと」
「……そんな力が、俺にあるってのかよ? だって、俺はっ……!」
――俺は、ただのガキだ。
兄貴みたいに強いわけがないし、古我知さんに敵うわけがない。
……そうだ、兄貴に行ってもらおう。「解放の先導者」を素手で叩き壊すような鉄人が「救済の先駆者」になれば、「呪詛の伝導者」なんてけちょんけちょんだろう。
強盗の時は――たまたま俺しかいなかった、ってだけだ。代わりがきくなら、代わった方がいいに決まってる。それが兄貴なら、なおさらじゃないか!
「樋稟は、『お前さん』の助けを待っておる。言ったじゃろう? あの娘は本当は、『お姫様』になりたかっ
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