第34話 やられたら、やり返す
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おーし、カッコよく名乗ったからにはやるしかないな!
勝算はあるにはあるけど、それに実効性があるかはこれからに掛かって来る。まずは、試しにこっちから仕掛けてみるか……!
俺は腰を落とし、中段構えの姿勢で「呪詛の伝導者」に狙いを付ける。拳の先を相手に向け、利き腕のある右半身を前面に出す。そうしておくことで、スムーズに攻撃に移れるようになるという、「少林寺拳法」におけるスタンダードな構えだ。
昼間の強盗との戦いで、「救済の先駆者」になれば「普通の護身術程度の拳法」でも相当な威力を発揮できることがわかった。俺がこの力を戦いに応用するなら、「対『解放の先導者』用格闘術」より手慣れてる、こっちのやり方で立ち向かった方がマシだろう。
俺はすり足で確実に距離を詰めるべく、構えを崩さないようにジリジリと近づいていく。
「……あの時の、構えだね。お兄さんに教わったのかな」
「ご名答! 兄貴までとは行かないが、簡単にはやられないぜ」
やっぱり、強盗の一件での戦いは向こうに筒抜けだったらしい。俺のこの構え、既に周知のことだったか。
なら違う構えで意表を突くか――と、中段構えを解いた瞬間。
「そうか。じゃあ、精一杯立ち向かって見せてくれ」
何の躊躇もなしに――腰からピストルを抜いた。
そして、その真っ黒な銃身を目の当たりにして固まる俺に向け、迷わず発砲!
「どわあああッ!?」
思わず瞬時に横に飛び、積み上げられていたドラム缶の山に身を隠した。おいおいおい! 飛び道具なんてアリですか〜!?
「慌てなくても着鎧甲冑なら、この距離から一発当たったくらいで命に関わるようなケガはしないだろうに。全く、騒がしい子だ」
ちっくしょう! 向こうは戦闘用、こっちは救命用。そんな用途の違いが、こんなのっけから出てくるなんて!
確かに向こうはこっちと違い、バリバリの戦闘兵器。ピストルの一丁くらい持ち歩いてなきゃ、逆に不自然なくらいの相手なんだ。
「救済の先駆者」が非戦闘用である以上、ああいう飛び道具の類は一切持てない。この身体能力だけが、唯一アイツに対抗できる「武器」なんだ。
「変態君、ダメよ! 逃げて!」
矢村におぶられる形で、戦場から離されていた救芽井が悲痛に叫ぶ。あんのバカ、まだあんなコト言ってやがる。
「お前独りでどうにかなるわけじゃなかったんだろ!? こうなった以上、一人やられるも二人やられるも一緒さ!」
「でもっ――!」
「でももデーモンもないの! 矢村、救芽井のこと頼むぞ!」
「う、うんっ……!」
とにかく、まずは救芽井と矢村を助けることを最優先にしないと。俺は脱兎の如く駆け出し、「呪詛の伝導者」や周りで様子を伺っている「解放の先導者」の注目を集中させる。
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