第32話 ヒーローは遅れてやって来るもの?
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うやら至近距離で撃たれたら、「救済の先駆者」といえどただでは済まないようだ。
「りゅ、龍太? アタシら助けに行けんの……?」
震える細い指で俺の袖を捕まえ、矢村は今にも泣き出しそうな顔をする。俺だって、こんな状況で見てるだけなんて胃が痛いさ! けど――
「……ダメだ。俺が役に立てるなら、それは救芽井の着鎧が解けてからだ。それまで俺達は、何をするにせよ足を引っ張ることになっちまう」
「そんなっ……!」
――そう。俺が救芽井を救うには、まず「救済の先駆者」にならなくちゃいけない。けど、あいつの性格や前の別れ方からして、真正面から説得して「腕輪型着鎧装置」をくれる確率はゼロに等しい。だから今は時期を待つしか――
「きゃあああっ!?」
……!? なんだ!?
俺は轟く悲鳴に反応して、俯きかけていた顔を上げて眼前の光景に目を見張る。
「呪詛の伝導者」から黒い帯のようなものが飛び出し――瞬く間に救芽井に巻き付いてしまった。まるで、磁力か何かで引き付けてしまったかのように。
彼女は両腕を封じられてしまい、豊かな胸だけが縛りから逃れるように浮き出ていた。
「な、なんだアレ!」
「救芽井、縛られとる……!?」
俺と矢村が驚いている間に、古我知さんが身体を縛られ動けずにいる救芽井に近づいていく。ど、どうするつもりだ!?
「ソレは着鎧甲冑の強度を繊維に応用したゴム製だからね……簡単には外れないよ。これでわかっただろう? 技術はより強く、需要に応じたものが勝ち残り、需要に反するものは廃れていく。そしてどんな世の中であっても、兵器という概念は最高の需要となる」
「くぅっ……!」
「君達はそれを許さず、僕を阻んだ。しかし、現にこうして倒されている。どれほど君達の方に道理があるのだとしても、それでは何の意味も成せない」
……どういうことだ? あの人、動けなくなったところでとどめを刺しに行くのかと思えば――説得してる?
「僕は、そんなことがあってはならないと思う。君達一家が積み上げた力は、無に帰してはならないはずだ」
まさか、この期に及んで話し合いで決着を付けるつもりなのか? ――彼の声色からは、威圧が感じられない。むしろ、手を差し延べているかのような。
「だからこそ、僕はこの『呪詛の伝導者』を作り上げた。世界が望む形で、君達の力を知らしめるために。それが着鎧甲冑の素晴らしさを世界中に伝える、一番の近道なのだから」
「――ふざけないでッ!」
そこで響いてきたのは、一際大きい救芽井の叫び声。彼女は自らの声帯を潰すほどの声量で、反論の声を上げた。
「あなたのやってることは、ただの恩知らずよ! 人の夢を踏みにじり、全てを奪い、私達を排除しようとしている!」
「別に
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