第31話 自分より速い女の子に、フラグが立つわけがない
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してな! はい息吸って〜、吐いて〜」
なんか、ものっそい矢村に面倒見てもらってる感じがする。男だよね? 俺って生物学上は男なんですよね?
男のプライドを踏み砕くと同時に、俺の呼吸を安定させてくれた矢村。すごくいい娘なんだけどね……なんかいろいろと突き刺さる。
「どしたん? やっぱまだ疲れとる? もしかして、休憩挟んだから体冷ましてしもーたん?」
「いや、別にそういうわけじゃ――」
「いかんで! 龍太にはこれから大事なお仕事があるんやけん、しっかり体暖めとかな、怪我するで!」
矢村はランニングの要領で腕を振り、こうして体を暖めろと促してくる。いや、そうしたいのは山々なんだけどね? そんなことしてると余計に体力消耗して、古我知さんとの対決まで持たな――
「しゃーないなぁ。アタシが抱きしめて暖めたるけん」
――いと、もっとすごいことになりそうな予感!? ファミレスのアレといい、一体どこまで俺の純情を振り回すつもりなんだッ!?
「ま、待て! ……よ、よーし、体力全快! いざ救芽井のもとへ!」
「おー! やったるでぇー!」
これ以上男のプライドに障る前に、俺は元気が戻ったことをアピールしようと、両腕を上げてポーズを決める。頭は良くても単純なところがある矢村は、それがやせ我慢であることは全く気付かないまま、気合の入った声を轟かせ――
「――って、ちょっと待ていっ!」
「のわぁ! なんや!?」
ふと気に掛かった重大な疑問に思い当たった途端、俺の叫びに矢村が思わず尻餅をついてしまった。
スリップした拍子に、宙に眩しく白い脚が投げ出され――見えた! 柄は青と白のストライプ……じゃなーい!
「……なんで矢村までついてくるんだよ?」
そうなのだ。ゴロマルさんから勝機をたまわった俺はともかくとして、別に戦うわけではない矢村がわざわざついて来るって、どういうことだ?
「気まっとるやろ、あんたと同じや!」
「え……俺と?」
「このまま終わってしもうたら、後味悪くて受験勉強なんて出来んし……それに、アタシはもう一回、救芽井に会いたいんや」
これは意外な話を聞いてしまった。あれだけ対立していた救芽井に、今は会いたいと申すか。
「話しとるうちに、両親の夢に憧れて頑張ってる、いい子やってのがようわかったんや。ほやけん、ちょっと、妬いとったんかも知れん。あんなにピュア過ぎる娘やったから、ついあんな言い方しよったんかも知れんのや」
そんな彼女の表情には、ファミレスの時と同じ「悔やみ」が現れていた。
なるほど、ね。この娘も、俺と同じだったんだ。救芽井と、ちゃんと仲直りしたいんだろうな。
「役に立てんとは思うけど……アタシ、もう守られるだけなんて懲り懲りなんよ!
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