第30話 秘密って何だっけ
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救芽井は、戦いに行ってしまった。
止めることはおろか、励ましの言葉さえ掛けられないまま。しかも、最後に彼女の声は震えてもいた。
あまりと言えば、あまりにも最悪。
こんなもん、余計に気を遣わせたようなもんじゃないか!
「くそっ! 追い掛けて――!」
「待ってや龍太! 行ってもアタシらじゃ何も……!」
彼女の後を追おうとする俺に対し、矢村は両手を広げて立ち塞がる。声色は酷く張り詰めていて、表情は慈悲を乞うかのように切ない。
「だけど……!」
なんとしても救芽井を追いたい。そのために反論しようと口を開きはした――が、その具体的な言葉が出て来ない。
――わかりきってるからだ。矢村の言うことが、紛れも無い正論であると。
俺がしゃしゃり出たところで、役に立つことはないのは明白だ。訓練は逃げ回るだけの中途半端な結果に終わり、「救済の先駆者」のレスキュー機能の使い方もよくは知らない。
代わりに戦おうにも「解放の先導者」一体にすら歯が立たず、彼女が傷ついても助けることすらできない。そんな俺が、救芽井に何をしてあげられるってんだ?
――なんだよ。なにも出来ねぇじゃねーか。何が「ヒーロー」だ!
肝心な時になにも出来なくて、こんなっ……くそっ!
「なんで『俺』なんだよ……! なんで救芽井の味方になったのが『俺』だったんだ! もっとちゃんとした奴が一緒にいてくれりゃ、救芽井だって――!」
そこで、俺は一人の人物を思い出した。――ゴロマルさんだ!
彼なら、なんとか救芽井を助ける方法を捻り出してるかも知れない。
都合のいい妄想に過ぎないというのはあるかもだが、今は彼を当てにするしかない。
――救芽井にとっての「大人の味方」は、彼しかいないはずだから。
「ゴロマルさんッ!」
救芽井本人が慌てて飛び出したせいか、鍵が開けられていた救芽井家に入り込むと、俺はコンピュータをパチパチといじる音を頼りに彼のいる場所を目指す。矢村も俺に続き、「お、お邪魔しま〜す……」とたどたどしく入ってくる。
もう聞き慣れてしまった、救芽井家仕様のコンピュータを使う音。それだけの情報を元手に俺は――居間でパソコンに向かい続けていた、人形のように小柄な老人を発見した。
「ゴロマルさんッ! 大変だッ! 救芽井と古我知さんが戦うつもりだって……!」
「……そうか、行ってしもうたか。できるものなら、避けるべきであったのじゃがな……」
こっちに振り返ることもせず、ゴロマルさんはただ黙々とキーボードを打っていた。その声色からは、状況に見合うだけの焦燥感や悲壮感が感じられない。
なんだよ……なんであんたはそんなに落ち着いてんだ!?
「避けるべきだった――って、そうに決まってるじゃない
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